HOKUTO編集部
5日前
内分泌療法で病勢進行が認められたER+/HER2‑進行乳癌を対象に、 ①選択的エストロゲン受容体分解薬 (SERD) imlunestrant単剤療法、 ②担当医選択の標準治療、 ③imlunestrant+CDK4/6阻害薬アベマシクリブ併用の3群間で有効性および安全性を評価した第Ⅲ相⾮盲検無作為化比較試験EMBER-3の結果から、 ESR1遺伝子変異陽性例において、 imlunestrantは標準治療と比べてPFSを有意に改善した。 また、 アベマシクリブ併用療法はESR1遺伝子変異にかかわらず、 imlunestrant単剤療法と比べてPFSを有意に改善した。 米・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのKomal L. Jhaveri氏が発表した。 同試験結果の詳細は、 NEJM 2024年12月11日オンライン版に同時掲載された。
現在、 多くの国で承認されている唯一のSERDであるフルベストラント*は、 筋肉内投与のため患者負担が大きく、 また、 ESR1変異陽性患者において抗腫瘍効果が限定的であるため、 この両方を改善し、 かつ、 良好な安全性プロファイルを持つ新しいSERDが求められている。
次世代SERDとして開発中のimlunestrantは経口薬であり、 ESR1変異陽性患者においても持続的な効果が期待できる。
アロマターゼ阻害薬単独またはCDK4/6阻害薬との併用による治療で病勢進行が認められたER+/HER2‑の局所進行または転移乳癌874例が、 以下の3群に1 : 1 : 1で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、 担当医師の評価による無増悪生存期間 (PFS) で、 imlunestrant群とSOC ET群はESR1変異陽性患者および全集団、 imlunestrant群とimlunestrant+ABE群は全集団を対象として評価された。
重要な副次的評価項目は、 全生存期間 (OS)、 盲検下独立中央判定 (BICR) によるPFS、 奏効率(ORR)、 安全性などであった。
ベースライン時の患者背景は、 ESR1変異陽性例を含め、 3群間で概ね同様だった。
CDK4/6阻害薬による治療歴があった患者はimlunestrant群が59%、 SOC ET群が57%、 imlunestrant+ABE群が65%だった。 ESR1変異陽性患者はそれぞれ42%、 36%、 32%、 PI3K経路の変異陽性患者は39%、 39%、 41%に認められた。
担当医師の評価によるESR1変異陽性例におけるPFS中央値は、 SOC ET群と比べimlunestrant群で有意に改善した。
HR 0.62(95%CI 0.46-0.82)、 p<0.001
一方、 全集団におけるPFS中央値では、 imlunestrant群とSOC ET群との比較で有意差が示されなかった。
HR 0.87(95%CI 0.72-1.04)、 p=0.12
全集団において、 imlunestrant+ABE群のPFS中央値はimlunestrant群と比べて有意な改善を示した。
HR 0.57(95%CI 0.44-0.73)、 p<0.001
ESR1変異別のサブグループ解析においても、 ESR1変異陽性・陰性のグループいずれもimlunestrant+ABE群で全体集団と同様の改善がみられ、 imlunestrant+ABEの抗腫瘍効果がESR1変異の影響を受けないことが示された (ESR1変異陽性患者のHR 0.53[95%CI 0.35-0.80]、 ESR1変異陰性患者のHR 0.59 [同 0.43-0.81])。
その他、 PI3K経路の変異陽性患者、 CDK4/6阻害薬の治療歴がある患者でも結果は一貫していた。
OSは中間解析の時点で未成熟であったが、 SOC ET群に対するimlunestrant群のハザード比は、 ESR1変異陽性例で0.55 (95%CI 0.35-0.86)、 全集団で0.69 (同 0.50-0.96)、 ESR1変異陰性例あで0.87 (同 0.54-1.40) であった (成熟度はそれぞれ31%、 23%、 18%)。
imlunestrant群およびSOC ET群による主な治験薬投与後の有害事象 (TEAE) の発現は、 倦怠感、 下痢、 悪心などで、 ほとんどはGrade1であった。
Grade3以上の主なTEAEは貧血、 好中球数減少などであった。 imlunestrant+ABE群の主なTEAEは、 下痢、 悪心、 好中球数減少などであった。 Grade3以上のTEAE発現率は、 imlunestrant群が17%、 SOC ET群が21%、 imlunestrant+ABE群が49%であった。 投与中止率はそれぞれ4%、 1%、 6%といずれも低かった。
imlunestrantは単剤療法、 アベマシクリブ併用のいずれにおいても、 良好な安全性プロファイルを示した。
Jhaveri氏は 「imlunestrant単独またはimlunestrantとアベマシクリブとの併用療法は、 内分泌療法で病勢進行したER+/HER2‑進行乳癌に対する治療選択肢として有望である」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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