海外ジャーナルクラブ
6ヶ月前
Iyodaらは、 日本小児がん研究グループ (JCCG) の臨床試験で得られた急性骨髄性白血病 (AML) 検体および、 海外のAMLデータセットを用いて、 遺伝子異常に基づくAMLの予後予測の精度向上を目的とした大規模な遺伝子解析を実施した。 その結果、 KRAS遺伝子のコドン12変異を有する症例は予後不良であることが明らかとなった。 本研究は、 Leukemia誌において発表された。
遺伝子異常でもコドンによって大きく予後に影響を与えるというのは大きな発見と言えます。
AMLの診断時には白血病細胞の遺伝子異常などを調べて予後を予測することで、 リスクに応じた治療が行われている。 しかし、 現在のリスク分類の精度は十分ではなく、 低~中間リスクに分類されても再発・死亡例が多いことが知られている。 そこで、 予後をより正確に予測できる新しい指標が必要とされている。
JCCGの臨床試験AML-99・AML-05・AML-12に登録されたKMT2A再構成AML症例の余剰検体を用いて、 次世代シークエンサーを用いた網羅的な遺伝子解析を実施した。
また、 海外 (TARGET-AMLコホート) のAMLデータセットを統合し、 計225例のKMT2A再構成AML症例について、 KRAS遺伝子変異がみられるコドンによる生存率の違いを調査した。
KRAS遺伝子のコドン12変異を持つ症例は、 予後不良であることが確認された。 この傾向は、 JCCGコホート、 海外のTARGET-AMLコホートのいずれにおいても確認された。
KRAS遺伝子のコドン12変異は、 高リスク群、 低~中間リスク群のいずれにおいても予後不良と関連していた。
多変量解析の結果、 KRAS遺伝子のコドン12変異は、 現在リスク分類に用いられている他の遺伝子異常 (FLT3-ITD、 KMT2A-MLLT4など) とは独立して予後不良に関与していることが明らかとなった。
KRAS遺伝子のコドン12変異が予後不良に関わるのは、 KMT2A再構成AMLにおいてであった。 KMT2A再構成以外のAML症例 (計882例) の解析では、 KRAS遺伝子のコドン12変異の有無による予後に有意な違いはみられなかった。
著者らは、 「AMLの診断時に、 KMT2A再構成を持つ症例についてはKRAS遺伝子のコドン12変異の有無を調べることで、 より正確な予後予測が可能になり、 リスクに応じた最適な治療につながる可能性が考えられる。 予後予測につながる遺伝子変異は各種の癌で多数報告されているが、 変異の生じたコドンの影響まで検討した研究は多くない。 KRAS遺伝子変異はさまざまな癌でみられるため、 他の癌でもコドン12変異の予後への影響について検討することは重要と思われる」 と述べている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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