亀田総合病院
12日前

2026年5月15~20日に米国フロリダ州オーランドで、 米国胸部学会 (ATS) 2026 が開催されました。 本稿では亀田総合病院呼吸器内科主任部長の中島啓先生に、 若手の医師とともにATS 2026に参加して得られた経験や会場の雰囲気についてご報告いただきました。
今年のATSは、 私自身が発表する立場というよりは、 若手医師とスタッフの挑戦を支える立場で参加した学会でした。 国際学会で発表すること、 英語で質疑応答を行うこと、 そして世界の研究者と同じ場に立つこと。 その一つひとつが、 参加したメンバーにとって大きな経験になったと思います。
2026年5月15日から20日にかけて、 米国フロリダ州オーランドで、 米国胸部学会 (American Thoracic Society : ATS) 2026 International Conferenceが開催されました。 会場はOrange County Convention Centerで、 世界中から呼吸器、 集中治療、 睡眠医学に関わる医師、 研究者、 医療者が集まり、 最新の知見を共有する、 世界最大規模の呼吸器学会です。

今回の渡航前には、 緊迫する世界情勢への不安もありました。 しかし、 実際に現地に到着してみると、 そこには例年と変わらないATSがありました。 世界中から多くの医師や研究者が集まり、 朝から夕方まで各会場で熱心な議論が行われていました。
Meet the Expert、 Year in Review、 シンポジウム、 Abstract Sessionなど、 多くのセッションが同時並行で開催され、 どの会場でも各領域のトップランナーが最新の研究成果や臨床上の課題について議論していました。 呼吸器内科という分野の広さと深さ、 そして世界中の研究者が同じ課題に向き合っていることを、 あらためて実感しました。

今回、 当科からは4人で参加し、 スタッフ2人と専攻医1人が発表を行いました。 いずれも呼吸器感染症に関する演題であり、 慢性肺アスペルギルス症、 非結核性抗酸菌症・気管支鏡、 非HIVニューモシスチス肺炎という、 当科が日頃から力を入れて取り組んでいる領域でした。

3人とも、 事前に英語での発表練習と質疑応答の準備を何度も行いました。 診療科内で実施した予演会では、 想定される質問を洗い出し、 英語でどのように答えるかを繰り返し練習しました。 決して余裕があったわけではありませんが、 準備してきたことを支えに、 それぞれ何とか質疑応答を乗り切ることができました。
国際学会の発表では、 完璧な英語を話すことよりも、 自分の研究を自分の言葉で説明し、 相手の質問に誠実に答えることが大切です。 その意味で、 今回の経験は参加したメンバーにとって大きな自信になったと思います。
今回あらためて感じたのは、 若手・専攻医の時期に世界を知ることの重要性です。 日本の中だけで診療や研究をしていると、 自分たちの取り組みが世界の中でどの位置にあるのかを実感する機会は多くありません。
しかし、 国際学会に参加すると、 世界には多様な臨床現場、 研究テーマ、 考え方があることを肌で感じます。 呼吸器感染症という同じ領域であっても、 国や医療制度、 患者背景が異なれば、 問題意識も研究の切り口も変わります。 その広さに触れることで、 自分たちの診療や研究をより客観的に見つめ直すことができます。
世界を見ることで、 同時に、 日本の医療の強みや課題も見えやすくなります。 日本で当たり前と思っている丁寧な診療のあり方には大きな価値があります。 一方で、 国際的な発信力、 英語で議論する力、 研究を世界に届ける力には、 まだ伸ばすべき余地があることも感じます。
世界を知ることは、 単に海外に憧れることではありません。 日本を外から見直し、 自分たちがどこで勝負できるのかを考えるための大切な機会なのだと思います。
もちろん、 国際学会での発表には大きな負荷があります。 英語で発表し、 英語で質問を受け、 英語で答える必要があります。 しかし、 その負荷こそが成長につながります。 事前に準備し、 本番で緊張しながらも何とか乗り切る。 その経験が、 次の臨床、 次の研究、 次の英語学習への強いモチベーションになります。
私自身は、 ATSへの参加が3年連続となりました。 初めて参加したときは世界の大きさに圧倒されるばかりでしたが、 毎年参加を続けることで、 少しずつ知り合いが増えてきたことを実感しています。
今年は、 私の専門領域である呼吸器感染症関連のnetworking dinnerに参加しました。 また、 呼吸器感染症部会のAssemblyにも参加し、 呼吸器感染症研究に取り組む医師たち、 ATS肺炎ガイドラインのメンバー、 部会のチェアや要職を務める先生方とも交流する機会がありました。
3年連続で参加することで、 単なる一参加者から、 少しずつ顔を覚えていただける存在になってきたように感じています。

ありがたいことに、 部会の要職やガイドラインに携わる先生方から研究やキャリアについてメンタリングを受けられる機会も出てきました。 世界の第一線で活躍する先生方と直接話し、 自分たちの研究の方向性について助言をいただけることは、 非常に貴重な経験です。
国際学会の価値は、 最新知見を学ぶことだけではありません。 継続して参加し、 研究を続け、 論文を書き、 少しずつ関係性を築いていくことで、 世界との距離が確実に縮まっていくのだと思います。
ATSは、 呼吸器内科の最新知見を学ぶ場であると同時に、 若手医師が世界を知り、 自分の可能性を広げるための貴重な場です。 特に専攻医の時期に国際学会を経験することは、 その後の臨床、 研究、 英語学習へのモチベーションを大きく高めてくれます。 今回参加したメンバーにとっても、 オーランドでの経験は、 今後の医師人生の中で大きな意味を持つものになると思います。
学会の合間には、 フロリダらしい開放的な雰囲気に触れ、 おいしいステーキを味わう時間もありました。 こうした現地での体験も含めて、 国際学会は若手医師の視野を広げてくれます。
今年は自分自身の解析結果が間に合わず、 発表者としてではなく、 指導者、 共同演者、 そしてネットワーキングを主な目的とした参加になりました。 しかし、 それでもATSに参加する意義は非常に大きいと感じました。
来年以降も、 当科から継続して国際学会に挑戦する若手医師を送り出していきたいと思います。 そして、 世界中の同志とつながりながら、 日々の臨床と研究をさらに前に進めていきたいと思います。
次の記事では、 ATS 2026で特に注目された演題について報告します。

私のホームページ 「Kei Nakashima | Medicine&Insights」 では、 呼吸器内科の重要論文、 臨床研究、 ライフハック、 医学教育などをテーマに、 日々記事を発信しています。 また、 下記は私が執筆・監修を担当した書籍です。 日常診療の一助として、 ぜひご活用ください!
📕医学生・研修医・全ての医師向け :
『臨床医のためのライフハック ( 「診療・研究・教育」 がガラッと変わる時間術) 』
忙しい中で、 診療・研究・教育に取り組むためのライフハックを凝縮した1冊です。
📘研修医・内科専攻医向け :
『胸部X線・CTの読み方 やさしくやさしく教えます 改訂版』
胸部画像の苦手克服に最適な一冊です。
📙呼吸器内科全般を深く勉強したい先生に :
全国のエキスパートの知と技を結集した一冊です。
📗呼吸器内科の基本をしっかり学びたい方に :
診療における“最適解”を探る実践的な入門書です。
当科では教育および人材交流のために、 日本全国から後期研修医・スタッフ (呼吸器専門医取得後の医師) を募集しています。 ぜひ一度見学に来て下さい。
連絡先|主任部長 中島啓
X: https://twitter.com/keinakashima1
note: https://note.com/unique_fowl2375
亀田総合病院呼吸器内科 Instagram|https://www.instagram.com/kameda.pulmonary.m/
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。