HOKUTO編集部
2年前
がん免疫療法に関してがん種横断的な治療ガイドラインである「がん免疫療法ガイドライン 第3版」 (編 : 日本臨床腫瘍学会) が3月20日、 4年ぶりに改訂された。
2023年3月16~18日に福岡市で開催された第20回日本臨床腫瘍学会では、 同ガイドライン・副ワーキンググループ長の岡山大学病院ゲノム医療総合推進センター/同大学病院呼吸器・アレルギー内科・二宮貴一朗氏が、 同ガイドラインの改訂ポイントを紹介した。 ここでは、 そのエッセンスを紹介する。
第2版で設定されていた「がん種別エビデンス」については、 第3版ではエビデンスにおける推奨提示は行わず、 「エビデンスの強さ」のみを提示。 代わりに、 がん種・臓器横断的な背景疑問 (Background Question;BQ) が新設され、 総合的に考慮した「ステートメント」が提示された。
これは第3版改訂時に、 ①がん種ごとに標準治療は異なり、 免疫療法以外に推奨される治療法がある場合、 適切な評価ができない②既存の臓器別がん診療ガイドラインとの齟齬が生じる-といった懸念が指摘されたためであるという。
すなわち、 第2版では、 「がん免疫療法の分類と作用機序」「免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の副作用管理」「がん免疫療法のがん種別エビデンス」の3つの章から構成されていたが、 第3版では「がん免疫療法における背景疑問 (BQ) 」が加わり4つの章から構成されている。 新設されたBQは以下の5つである。
第1章の分類と作用機序では、 現在、 実臨床で使用されている薬剤に加えて、 今後開発が進むであろう有望な治療についても解説がされた。 例えば、 ICIについては、 抗LAG-3抗体薬relatilimabの解説が加わった。
LAG-3は活性化T細胞に発現する分子として同定されたもので、 LAG-3シグナルを阻害することで免疫の再活性化が得られることが期待されている。
悪性黒色腫に対しては、 すでにrelatilimabと抗PD-1抗体ニボルマブとの併用療法の有効性が第Ⅲ相試験で示されており、 米国では昨年3月に承認されている (N Engl J Med 2022 ; 386: 24-34)。 現在さまざまながん種において、 抗LAG-3抗体薬単剤および抗PD-1抗体との併用よる臨床試験が進行中であるという。
第2章の副作用管理では、 多岐にわたる有害事象を網羅的に解説。 第3版では、 多数の症例報告が蓄積された背景を踏まえて、 対処方法が更新された。
各領域でエビデンスレベルが高いものについては、 エビデンスをより明確にするために「エビデンスの確実性」が新設され、 記載された。
最後に二宮氏は、 「『がん免疫療法ガイドライン第3版』の内容は他のがん診療ガイドラインと少し異なる点があるが、 がん種横断的なアプローチを意識して作成しており、 医師だけでなく広く医療従事者に対して免疫療法の最新が理解できるような内容になっている。 ICIは非常に多くのがん種で適応が広がっており、 今後さらに多くの施設で用いられることが予想される。 複数のがん種に対する(複合)免疫療法で得られた経験・エビデンスは、 他の領域の治療においても有効性や有害事象を予測・管理するうえで極めて重要と考えてほしい」と呼びかけた。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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