【BMJ】NSAIDsの不適切処方が医療費に及ぼす影響 —10年間で約60億円の増加ー
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海外ジャーナルクラブ

3ヶ月前

【BMJ】NSAIDsの不適切処方が医療費に及ぼす影響 —10年間で約60億円の増加ー

 【BMJ】NSAIDsの不適切処方が医療費に及ぼす影響 —10年間で約60億円の増加ー
英国のCamachoらは、 経口NSAIDsが高齢者や心不全、 慢性腎疾患などの処方高リスク患者に与える影響を、 集団ベースのコホート研究と経済モデリングを用いて評価した。 結果、 NSAIDsの不適切な処方による英国全体での10年間の総QALY損失は6,335と推計され、 約60.0億円 (3,143万ポンド) の医療費増加が見込まれた。 本研究の成果はBMJに発表された。 
※本文中記載は1ポンド = 約191.0円で計算(2024/8/16時点)

📘原著論文

Estimating the economic effect of harm associated with high risk prescribing of oral non-steroidal anti-inflammatory drugs in England: population based cohort and economic modelling study. BMJ. 2024 Jul 24:386:e077880. PMID: 39048136

👨‍⚕HOKUTO監修医コメント

BMJなので、 実臨床にすぐに応用できる結果やクリアな記載を期待しましたが、 論文の"What this work adds, and implications for prescribers and policy makers"の項には、 実臨床にすぐ展開できるような具体的な記載はありませんでした。


研究の背景

NSAIDs処方における5つの高リスク群

非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) は、 疼痛や炎症を和らげる一方、 以下のような処方高リスク群において、 消化管出血や腎障害、 心血管系の問題を引き起こす可能性があるとされる。

NSAIDS処方 5つの高リスク群
 ①高齢者 (≧65歳)で、 胃粘膜保護薬なし
 ②消化性潰瘍既往ありで、 胃粘膜保護薬なし
 ③経口抗凝固薬と経口NSAIDの併用
 ④心不全患者
 ⑤慢性腎臓病患者

本研究では、 これら5つの高リスク群に対するNSAIDs処方割合や、 患者への影響、 医療費の増加率などを検証・推計した。

研究の結果

英国全体で10年間で約60億円の損失

高リスク処方の頻度が最も高かったのは、 「胃腸保護薬が処方されていない高齢者」で、 1000人あたり1.70であった。 英国全体で1,929QALYs*¹の損失が生じ、 医療費は246万ポンド*² (約4.7億円) 増加すると推計された。

*1 : 95%CI 1,416-2,452 *2 : 95%CI 65万-468万

一方、 「経口抗凝固薬と経口NSAIDの併用患者」では、 有害処方イベントの頻度はそれほど高くないにもかかわらず、 英国全体で2,143QALYs*¹とより大きな損失が生じ、 医療費増加額も2,541万ポンド*² (約48.5億円) と大きかった。

*1 : 95%CI 894-4,073 *2 : 95%CI 525万-6,001万

結果、 英国全体で10年間の総QALY損失は6,335*¹と推計され、 医療費増加額は3,143万ポンド*² (約60.0億円) であった。

*1 : 95%CI 4,471-8,658 *2 : 95%CI 928万-6,711万

なお、 結果詳細は以下のとおりであった。

1人当たりの平均QALYs損失 (カッコ内は95%CI)
①高齢者 (≧65歳)で、胃粘膜保護薬なし 0.017 (0.012-0.021)
②消化性潰瘍既往ありで、胃粘膜保護薬なし 0.01 (0.01-0.02)
③経口抗凝固薬と経口NSAIDs併用 : 0.093 (0.039-0.176)
④心不全患者 : 0.046 (0.026-0.071)
⑤慢性腎臓病患者 : 0.11 (0.04-0.19)
1人当たりの平均医療費増加額 (カッコ内は95%CI)
①高齢者 (≧65歳)で、 胃粘膜保護薬なし : 23£ (6-44)
②消化性潰瘍既往ありで、胃粘膜保護薬なし : 24£ (6-45)
③経口抗凝固薬と経口NSAIDs併用 : 1,097£ (236-2,542)
④心不全患者 : 14£ (-71 -98)
⑤慢性腎臓病患者 : 207£ (-163-703)
患者1,000人当たりの有害処方イベントの発生率
①高齢者 (≧65歳)で、 胃粘膜保護薬なし : 1.70
②消化性潰瘍既往ありで、 胃粘膜保護薬なし : 0.11
③経口抗凝固薬と経口NSAIDs併用 : 0.37
④心不全患者 : 0.14
⑤慢性腎臓病患者 : 0.25

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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