HOKUTO編集部
2ヶ月前
米国臨床腫瘍学会泌尿器癌シンポジウム (ASCO GU 2025) が2月13~15日に米・サンフランシスコで開催され、 1日目は前立腺癌を中心とした演題が発表されました。本稿では、 Rapid oral abstractで発表された第Ⅱ/Ⅲ相試験GROUQ-PCS9とEZH2阻害薬mevrometostat +ENZA併用療法の第Ⅰ相試験に関して、 がん研有明病院総合腫瘍科部長の三浦裕司先生にご解説いただきました。
GROUQ-PCS9試験は、 オリゴ転移を有する去勢抵抗性前立腺癌 (CRPC) に対し、 エンザルタミド (ENZA) への転移指向性治療 (Metastatic directed treatment : MDT)としての体幹部定位放射線治療 (SBRT) 上乗せ効果を探索した第II/III相無作為化比較試験である。
オリゴ転移例のマネジメントは、 Case-Based Sessionでも取り上げられており、 前立腺癌においては依然として重要なトピックの1つである。 これまでに、 STOMP試験やORIOLE試験などオリゴ転移に対するMDTの効果を探索する無作為化比較試験が行われてきたが、 これらは去勢感受性前立腺癌 (CSPC) を対象にしており、 評価項目もアンドロゲン除去療法なしでの生存期間 (ADT-free survival) や去勢抵抗性前立腺癌のない生存期間 (CRPC-free survival) が含まれていた。
今回発表されたGROUQ-PCS9試験は、 ①CRPCを対象としている点、 ②アンドロゲン受容体シグナル阻害薬 (ARSI) にMDTを上乗せしている点が新しい。 そして主要評価項目である放射線学的無増悪生存期間 (rPFS) を2.3年延長 (進行・死亡リスクを52%低減) している点が印象的であった。
本試験では、 ARSIによる前治療歴がない症例が対象となっており、 CSPCに対してARSIが標準的に使われる現状と異なっていることが大きなLimitationである (このことが原因で第III相試験へ進めなかった)。 しかしながら、 CRPCに対して、 ARSIとMDTの併用に一定の効果が示せたことは、 実臨床においても励まされる結果であったと言えるだろう。
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次に、 転移性去勢抵抗性前立腺癌 (mCRPC) に対するEZH2阻害薬mevrometostat+ENZA併用療法の第Ⅰ相用量拡大無作為化比較試験の結果を紹介したい。
EZH2はエピゲノム領域のヒストン修飾に関わるため、 細胞周期、 アポトーシスの制御、 STINGを介した免疫系の制御など、 さまざまなメカニズムに関与している。 今回は、 ENZAとの併用により、 アンドロゲン受容体シグナル伝達経路 (AR pathway) との相乗効果を狙っている。
この約15年の間に、 前立腺癌に対するさまざまなメカニズムの薬剤が開発され、 臨床的アウトカムの改善が得られた。 今後、 第III相無作為化比較試験での検証が待たれるが、 新たな作用機序を持つ薬剤によるさらなる進展が得られることを期待したい。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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