HOKUTO編集部
8ヶ月前


遺伝子パネル検査を行う際、 検体として組織・血液のどちらを選ぶかは1つの大きなポイントになる。 検体の選択は、 基本的に 「がん種によらず、 組織検体が優先」 とされる。
乳がんのなかでもホルモン受容体 (HR) 陽性HER2陰性乳がんは、 遺伝子パネル検査の意義が大きい。 ただし、 根治切除後10年以上の経過を経て再発するなど、 初回治療から時間が経過してから検体が提出されるケースも多い。
再発時に遺伝子パネル検査の実施を検討する際、 表在リンパ節再発などで再生検が可能であれば、 再生検検体を優先する。
一方、 骨転移のみで再生検ができない、 あるいは血液検体が偽陰性となり得る場合は、 検体の選択が難しくなるため注意が必要となる。
ゲノム診療における病理組織の取り扱いに関する規程¹⁾²⁾では、 組織検体の有効期限は3年とされている。 しかし、 10年以上前の検体であっても、 適切な固定条件で保管され、 腫瘍細胞密度の高い手術検体であれば、 PIK3CAなどの活性化変異を検出できることがある。
組織検体を用いた乳がん遺伝子パネル検査において、 検体保管期間とPI3K pathway変異検出を比較した自験例を以下に示す。 10年以上経過した古い検体でも、 一定数の症例で変異が検出されていることが分かる。

古い組織検体で核酸品質が著しく低下している場合には検査中止となり、 血液検体での再検査が可能である。 一方血液検体では、 転移が少ない例や治療奏功中に採血した場合には、 循環腫瘍DNAが少なくなり、 偽陰性の結果で返却される可能性が高い。 血液検体で偽陰性のリスクが高いと考えられる時は、 古い組織検体であっても躊躇わずに提出を検討していただきたい。
一方で、 ESR1の活性化変異は、 内分泌治療不応後に獲得されることも多い。 そのため、 ESR1変異の検出を目的とする時は、 治療前のアーカイブ検体の使用は控えるべきと考えられる。

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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