進行非小細胞肺癌 (NSCLC) の1次治療における抗PD-1抗体薬による単剤療法は、 その生存改善効果がPD-L1発現率≧90%の症例でより著明であることが短期間観察から報告されていたが、 今回新たに長期観察でも同様であることが示された。 米国・Dana-Farber Cancer InstituteのBiagio Ricciuti氏が報告した。
背景と目的
進行NSCLCに対するペムブロリズマブ単剤による1次治療は、 観察期間中央値12.6ヵ月の時点で、 PD-L1発現率≧90%の症例グループにおいて50-89%の症例グループに比べ無進行生存期間 (PFS) および全生存期間(OS)をいずれも有意に延長していた (Ann Oncol 2019; 30: 1653-1659) 。 このPD-L発現率≧90%の症例群に対する抗PD-1抗体薬単剤の著明な生存改善が、 より長期でも維持され得るのかを今回検討した。
試験の概要
対象
検討対象となったのは以下の2つのコホートである。
同試験の対象は、 未治療のIIIB期、 IIIC期、 IV期の扁平上皮/非扁平上皮NSCLCで、 ①PD-L1発現率≧50%、 ②EFFR/ALK/ROS1変異陰性、 ③ECOG PS:0/1などの適格基準を満たした患者
抗PD-1抗体セミプリマブ単剤療法と担当医が選択したプラチナ製剤ベースの2剤併用化学療法を比較検証
- 抗PD-1抗体ペムブロリズマブを投与した米国内4施設*における後ろ向きコホートによる併合解析 (516例)
*Dana-Farber Cancer Instituteコホート、 MSK-IMPACT Clinical Sequencingコホート、 MD Anderson Cancer Centerコホート、 Massachusetts General Hospitalコホート
PD-L1発現率≧50%の進行NSCLCで、1次治療としてペムブロリズマブ投与を受けた患者が対象
方法
- EMPOWER-Lung-1試験・終了後観察コホート (セミプリマブ群のみ)
- EMPOWER-Lung-1試験では、以下のレジメンを施行。
セミプリマブ単剤 (350 mg IV q3w) ×108週 (病態進行の場合中止。 中止後はセミプリマブ+化学療法×4サイクルも可)
- 治療終了後、 ランダム化から1ヵ月後 (中央値) まで観察 (2022年3月4日で観察打ち切り)
- PD-LI発現が≧90%群と50-89%群に分けて比較
- 後ろ向きコホート併合解析
- PD-LI発現により≧90%群と50-89%群に分けて比較
評価項目
- EMPOWER-Lung-1試験・終了後観察コホート
- 主要評価項目:PFS、 全生存期間 (OS)
- 後ろ向きコホート併合解析:PFS、 OS
試験結果
EMPOWER-Lung-1試験・終了後観察コホート (セミプリマブ群)
PFS中央値、 3年時PFS率 (vs 化学療法群)
- PD-L1 ≧90%群:14.7ヵ月 (vs 5.1ヵ月) 、 34.6% (vs 4.9%)
- PD-L1 50-89%群:4.8ヵ月 (vs 5.3ヵ月) 、 14.2% (vs NA)
HR 0.52、 p<0.0001 (HR 0.94、 p=0.64)
OS中央値、 3年時OS率 (vs 化学療法群)
- PD-L1 ≧90%群:36.6ヵ月 (vs 13.7ヵ月) 、 52.9% (vs 26.6%)
- PD-L1 50-89%群:23.0ヵ月 (vs 12.5ヵ月) 、 34.6% (vs 19.7%)
HR 0.61、 p=0.007 (HR 0.92、 p=0.60)
後ろ向きコホート併合解析
PFS中央値、 3年時PFS率
- PD-L1 ≧90%群:9.0ヵ月、 29.2%
- PD-L1 50-89%群:5.4ヵ月、 13.8%
HR 0.69 (95%CI 0.54-0.84) 、 p<0.001
OS中央値、 3年時OS率
- PD-L1 ≧90%群:30.4ヵ月、 46.6%
- PD-L1 50-89%群:18.6ヵ月、 31.8%
HR 0.79 (95%CI 0.56-0.88) 、 p<0.01
Ricciuti氏らの結論
PD-L1発現率≧90%の進行NSCLC例の1次治療おいては、 抗PD-1抗体による単剤治療が長期間にわたり有意義な生存改善をもたらす。