海外ジャーナルクラブ
9日前
慶應義塾大学病院メモリーセンター長の伊東大介氏らは、 アルツハイマー病 (AD) の病態に関連する患者を対象に、 同氏ら研究グループが考案したAD簡易スクリーニング票である "Neucop-Q" を用いたアミロイドβ病理の予測力を検討した。 その結果、 認知症患者の臨床的徴候*である "head-turning sign(HTS)" と、 簡単な3つの質問 (病識、 楽しみ、 ニュース) から構成されるNeucop-Qにより、 ADおよび軽度認知機能障害 (MCI) を効率的に予測できる可能性が示された。 本研究はAlzheimer’s Res Ther誌にて発表された。
質問に対する正常と障害の例が興味深いです。 例えば、 娯楽の質問に対し"Generally, I enjoy everything"は障害となるようです。
ADの早期診断および簡便なスクリーニング方法の確立は、 臨床現場において重要な課題となっている。 そこで本研究では、 HTSおよびAD簡易スクリーニング票 "Neucop-Q" によるスクリーニング能を検証した。
155例の患者が登録され、 うち認知機能正常は47例、 MCIが3例、 認知症が64例、 精神疾患が8例であった。
参加者全員が、 以下3つの質問で構成されるNeucop-QおよびアミロイドPET、 タウPETによる診断を受けた。 Neucop-Qの質問は、 いずれも"正常 (normal)" もしくは"障害 (impaired)" で区分された。
Neucop-Qの質問内容
❶病識 (C) に関する質問
「現在、 困っていることはありますか?」
❷楽しみ (P) に関する質問
「現在、 楽しみはありますか?」
❸ニュース (N) に関する質問
「最近3ヵ月以内で気になるニュースを挙げてください」
さらに、 血漿アミロイドβ (Aβ) 42/40比、 リン酸化タウ181 (pTau181)、 グリア線維性酸性タンパク質 (GFAP)、 ニューロフィラメントライト (NFL) のレベルを測定し、 HTSおよびNeucop-Qの結果と比較を行った。
HTSとNeucop-Qによるスクリーニング結果
HTS陽性の特異度と陽性適中率 (PPV) は最も高く、 アミロイドPETはそれぞれ93%、 87%、 タウPETは94%、 95%だった。
また、 病識なし (C impaired) とニュースの記憶なし (N impaired) はアミロイドPETの陰性的中率 (NPV) が最も高く、 それぞれ75.0%、 72.5%であった。
さらに、 楽しみなし (P impaired) は、 アミロイドPETが陽性ではない非ADにおける、 非ADタウ陽性認知症の予測に高い特異度が示された (85.4%)。
アミロイドβ蓄積とスクリーニング結果の相関
これらの所見をPETの診断結果から検証するため、 アミロイドβの蓄積と上記のスクリーニングで得られた結果との相関を調べた。 その結果、 HTS陽性、 C impaired、 N impairedは、 Aβ42/40比*¹、 pTau181*²、 GFAP*³、 およびアミロイドPETセンチロイド*⁴と強く関連していた。 一方、 P impairedは神経炎症 (GFAP、 p=0.0061) を増加させ、 非AD認知症と関連していた。
Neucop-Qの質問の組み合わせでは、 C impaired/P normal/N impairedの症例において特異度およびPPVが最も高く (97%および83%)、 Aβ42/40比 (p=0.0006)、 pTau181 (p=0.0006)、 アミロイドPETセンチロイド (p<0.0001) と強い関連を示した。
著者らは 「HTS陽性、 病識なし (C impaired)、 ニュースの記憶なし (N impaired)はADおよびMCIに有用であり、 楽しみなし (P impaired)は非AD認知症の診断に有用であった。 この結果から、 HTSおよびNeucop-Qは極めて簡便なADの第一選択スクリーニングとして役立つ可能性がある」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。