メイヨークリニック感染症科 松尾貴公
13日前
Prosthetic joint infections: 6 weeks of oral antibiotics results in a low failure rate
人工関節感染症の治療において、 6週間の経口抗菌薬治療で低い治療失敗率を示したフランスからの多施設研究です。 本研究は、 経口抗菌薬の使用が可能な場合、 静脈内投与の期間を最小限に抑えることができる可能性を示しています。
本研究の結果は、 最近のNEJMからの人工関節感染症に対する6週間と12週間の抗菌療法を比較したオープンラベル無作為化対照試験における、 治療失敗率がそれぞれ18.1%と8.7%と差があった結果¹⁾と異なるものでした。
静脈注射の抗菌薬の有害事象を考慮し、 可能な限り早期に経口抗菌薬へ切り替える治療戦略は他の多くの感染症で支持されてきていますが、 今回のコホートではおよそ半数例が3日以内に経口抗菌薬に切り替えていることが注目すべき点です。
さらに本研究では、 人工関節を抜去・再置換せずに人工物を温存して洗浄と抗菌薬のみで治療を行うDebridement, antibiotics and implant retention (DAIR) が大部分を占めていますが、 これらの症例に対する長期の経口抗菌薬治療 (chronic suppression) の実施が非常に少ないのも特徴的です。
DAIRに対するchronic suppressionは現在多くの国や地域で議論の的であり、 長期の抗菌薬継続が必要 (場合によっては一生涯) であるという意見と、 短期で中止した後に臨床経過を十分に判断しながら経過をフォローする意見と2つ分かれています。
今回の研究の結果を受けて、 今後の更なるランダム化比較試験や対象例を増やしたコホート研究が期待されます。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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