関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座
10ヶ月前
関西医科大学呼吸器腫瘍内科学講座による、 呼吸器疾患・肺癌診療に役立つ情報をお届けします。 第4回は、「呼吸器腫瘍内科医がお薦めするガイドライン5選」 をご紹介します。 (解説医師 : 関西医科大学呼吸器腫瘍内科 生駒龍興氏)
診療ガイドラインは、 日々の臨床実践において医療者にとって欠かせない存在の1つですが、 そもそもガイドラインの役割とは何でしょうか?
辞書には 「指針・基本方針」 といった意味を持つと書かれています。 診療での基本指針とはすなわち『標準治療』です。 肺癌診療ガイドライン2023年版においても、 「本ガイドラインは,あくまでも執筆時における標準治療を示した参考資料である」 と述べられています¹⁾。
ガイドライン上でも、 治療方針は個々の患者の状態に応じて決定する必要があり、 強制するものではなく基本指針に過ぎないという姿勢がとられています。 実際の臨床現場では診療ガイドライン通りの治療が行えない場面が多々ありますが、 現時点での標準治療を学ぶ上で最適な教材と私は考えます。
それでは、 以下に呼吸器腫瘍内科の立場からお薦めするガイドラインを5つ紹介します。
呼吸器腫瘍内科として最重要なガイドラインの1つです。 標準治療の絶えない更新を反映するため、 毎年改訂されることが偉大な点として挙がります。 このように高頻度で改訂されるガイドラインは、 他の癌種では稀です。
本ガイドラインは、 診断から緩和治療を含む治療まで幅広く、 詳細な記載がなされており、 肺癌診療にあたる臨床医にとって不可欠のリソースです。 オンライン公開もされているため、 肺癌患者さんを担当する際には関連する総論の項目と該当するクリニカル・クエスチョン (CQ ; Clinical Question)を読んでみてください!
免疫チェックポイント阻害薬が本邦で承認されてから、 さまざまな癌腫の標準治療を担う薬剤となりました。 ただし、 同薬剤は従来の治療薬と異なる免疫関連有害事象 (irAE) という特殊な有害事象を引き起こします。 そのため治療効果だけでなく、 有害事象への対応についてのエビデンスも急速に蓄積されており、 同ガイドラインはそれらが総合的に解説されています。
免疫チェックポイント阻害薬を使用中にirAEが疑われる症例を経験した際は、 同ガイドラインをご参照ください!
殺細胞性抗癌薬を使用中に生じる主要な有害事象として骨髄抑制があります。 特に、 白血球(好中球)減少による発熱性好中球減少症 (FN) は生命に関わるリスクがあります。 FNはOncologic emergencyの1つであり、 救急診療を行う上でも重要な疾患です。 FNの対応を学ぶことは臨床医として有意義ですので、 冒頭のアルゴリズムだけでも一度目を通してみてください!
癌患者さんを診療する上で緩和ケアは不可欠であり、 緩和ケアを実践することでQOLの改善だけでなく、 生存期間を延長させる可能性も示唆されています。
緩和ケアで最も重要な症候の1つである疼痛のエビデンスの蓄積だけでなく、 疼痛に対する鎮痛薬の背景も学ぶことができます。 疼痛で困っている患者さんに対応する際、 一読をお勧めします!
こちらも胸部腫瘍患者さんを診療する上で重要な症候の1つである、 呼吸困難に関する薬物療法を含むさまざまなエビデンスがまとまっています。
最近では心不全などの非癌患者さんの呼吸困難に関する緩和ケアも着目されており、 非癌の進行性疾患での呼吸困難に関するエビデンスも学ぶことができます。 呼吸困難を感じる患者さんと出会った際は、 薬物・非薬物療法で推奨できる治療を検討してみてください!
ガイドラインは現在までのエビデンスの蓄積からなる標準治療の指針です。 数年後には標準治療でなくなることも多々あります。 ガイドラインだけでなく最新のエビデンスも取り入れ、 柔軟な診療を心がけてください!
🗒 改訂版 「進行性疾患患者の呼吸困難の緩和に関する診療ガイドライン」 の要点は?
🗒 「がん免疫療法ガイドライン」が4年ぶりに改訂、 要点は?
¹⁾日本肺癌学会編. 肺癌診療ガイドライン-悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍含む2023年版Web版.(https://www.haigan.gr.jp/guideline/2023/)
2022年4月に内科学第一講座より分離独立して開講し、 肺癌の標準的診療を実践しているほか、 呼吸器疾患や腫瘍に関心がある研修医の教育支援も行っています。 現在メンバーは14人おり、 最も特徴的な点は若い先生が多いことです。 40代以上は3人、 ほかは皆30代以下で、 エネルギーに満ち溢れています。 また、 新しい講座であるため、 他施設とのしがらみがありません。 出向先は研修医の希望を尊重し、 希望先の施設で研修を受けられるようにサポートしています。
興味のある先⽣はぜひ、 yuta1106yamanayt@gmail.comまでご連絡ください。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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