寄稿ライター
7ヶ月前

こんにちは、 Dr.Genjohです。 財務省の資料から我々保険医の将来を占う短期集中シリーズ 「医師の黄昏~氷河期の到来~」。 第2回では、 社会保障費の内訳とその変遷を改めて見直し、 なぜ 「医療費ばかりが悪者扱いされるのか」 を考えていきます。
財務省の資料 「社会保障」 はコチラ。
なお2025年4月23日、財務省の専門部会での検討内容を織り込んだ資料 「持続可能な社会保障制度の構築 (財政各論Ⅱ) 」 が公表されました。 本シリーズ終了後、フォーカスアップデート版のミニ連載を予定しています。
第1回でご紹介したように、 昨今、 「医療費が財政を圧迫している」 といった議論が目立ちます。 ですが、 その前提として、 社会保障費全体の内訳を正確に把握する必要があります。

2024年度の予算ベースで見ると、 社会保障給付費で最大の割合を占めるのは年金 (44.8%) 。 次いで医療 (31.0%) 、 福祉その他が残りの24.2%です。
医療が突出しているという印象を持つ人も多いかもしれませんが、 実際には医療費単独で半数に満たないのです。

医療・年金・福祉のいずれも、 1950年以降右肩上がりで伸びてきたことは確かです【グラフ2】。 しかし、 近年の動向に注目すると意外な事実が浮かび上がってきます。
例えば、 2020年→2024年で見ると、
つまり、 増え続けているのは年金だけなのです。
財務省の資料に立ち戻ってみましょう。 【表3】で2018年と2024年の社会保障費に関する予算を比べてみると、 社会保障費増加のうち、 医療費が占める割合はやはり縮小傾向にあります。

医療費は、 薬価改定や診療報酬抑制策により上昇幅は必死に抑制されているのです。 医療費の増大が槍玉に挙げられがちですが、 その批判の矛先は本当に正しいのでしょうか…?

もちろん、 医療の進歩が寿命延伸をもたらし、 結果として年金・介護費用を押し上げる一因になっている可能性については否定しません。 とはいえ、 【表4】をみると、 赤字で強調されているのは医療・介護の費用抑制ばかりと感じるのは筆者だけではないでしょう。
一方、 福祉分野の増加分には、 児童手当・育休給付といった少子化対策的な側面も含まれており、 これらには一定の妥当性があります。 筆者もこの点には理解を示します。
ただ、 「社会保障費の爆増=医療費のせい」 と目の敵にすることは短絡的ではないでしょうか。
今回は、 社会保障費における実際の内訳と医療費の位置づけを改めて確認しました。 次回は、 薬剤費と薬価改定について紐解いていきます。

Xアカウント : @DrGenjoh
¹⁾厚生労働省 : 給付と負担について
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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