海外ジャーナルクラブ
17日前
東京慈恵会医科大学の柳澤孝文氏らの研究グループは、 転移を有するホルモン感受性前立腺癌 (mHSPC) 患者を対象に、 アビラテロン、 エンザルタミド、 アパルタミドの3剤のアンドロゲン受容体経路阻害薬 (ARPI) の有効性および安全性を多施設共同後ろ向き研究で検討した。 その結果、 全生存期間 (OS)、 癌特異的生存期間 (CSS)、 去勢抵抗性前立腺癌 (CRPC) になるまでの期間において3剤は同等の転帰を示したことが明らかになった。 本研究は、 Prostate誌にて発表された。
研究者側は、 結論に「3種類の薬剤が同等の腫瘍学的転帰を示す」と書いているだけで、 有効性に直接言及したわけではありません。 研究成果を読者側がしっかりと解釈できるかどうかを問われる、 教科書的な研究と言えます。
mHSPCにおいて、 ARPIはアンドロゲン除去療法 (ADT) と併用されるが、 アビラテロン、 エンザルタミド、 アパルタミドの有効性と安全性の差については未解明であった。
本研究は、 これら3剤の有効性および安全性を実臨床成績を基に評価することを目的とした。
2015年9月~2023年12月にARPI+ADTによる治療を受けたmHSPC患者668例の記録が解析された。 アビラテロン、 エンザルタミド、 アパルタミドの比較は、 LATITUDE試験の適格基準に基づいた高リスク患者を対象に行われた。
比較項目として、 前立腺特異抗原(PSA)低下*の達成率、 OS、 CSS、 CRPCまでの期間、 有害事象の発生率が設定された。 また、 すべての群間比較で、 起こり得る交絡因子の影響を最小化するために傾向スコアマッチングが用いられた。
OS (p=0.7)、 CSS (p=0.5)、 CRPCまでの期間 (p=0.13) において、 3薬剤間に有意差は認められなかった。
3ヵ月後のPSA 95%低下の達成率は3薬剤間で差がなかった。 一方、 PSA 99%低下の達成率はアビラテロンがアパルタミドと比較して有意に高かった (72% vs. 57%、 p=0.003)。
最も頻度の高い有害事象は、 アパルタミドによる皮疹で発生率は34%だった。 一方、 重篤な有害事象の発生率は3薬剤間で有意差が認められなかった。
エンザルタミドは他の薬剤と比較し、 病勢進行以外の理由による治療中止率が最も低かった (10%)。
柳澤氏らは 「アビラテロン、 エンザルタミド、 アパルタミドは高リスクmHSPC患者のOS、 CSS、 CRPCになるまでの期間において同等の腫瘍学的転帰を示すことが確認された。 また、 PSA低下の達成率、 治療中止率、 有害事象プロファイルに関する比較結果は、実臨床での治療選択において重要な情報となり得る」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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