Balanescuらは, 心血管リスク因子を有する50歳以上の関節リウマチ (RA) 患者を対象に, JAK阻害薬 「トファシチニブ」とTNF阻害薬による感染症リスクを非盲検無作為化対照試験で検討 (ORAL surveillance試験) . その結果, 感染症リスクはTNF阻害薬に比べ, トファシチニブでより高いことが明らかとなった. 本研究は, Ann Rheum Dis誌において発表された.
📘原著論文
Balanescu AR, et al, Infections in patients with rheumatoid arthritis receiving tofacitinib versus tumour necrosis factor inhibitors: results from the open-label, randomised controlled ORAL Surveillance trial. Ann Rheum Dis. 2022 Aug 3;annrheumdis-2022-222405.PMID: 35922124
👨⚕️ HOKUTO監修医コメント
トファシチニブ (本邦商品名: ゼルヤンツ®錠)は、 COVID-19感染症治療で有名になったJAK阻害薬ですね. 実臨床では全ての局面でリスクとベネフィットのバランスを見ての選択となりますので, 感染症リスクを考慮してもJAK阻害薬が選択される場面はありそうです.
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研究デザイン
- 対象:心血管リスク因子を1つ以上有する50歳以上のRA患者
- 曝露:JAK阻害薬トファシチニブ 5mgまたは10 mgを1日2回投与, もしくはTNF阻害薬を投与.
- 全体および年齢別の100人当たりの感染症発生率 (IR) およびハザード比 (HR) を算出.
- 感染症の確率はKaplan-Meier推定, 感染症のリスク因子はCoxモデリングにより同定.
研究結果
- すべての感染症, 重篤な感染症イベント (SIE) , 非重篤な感染症 (NSI) のIR/HRは, トファシチニブ (10>5mg 1日2回) のほうがTNF阻害薬よりも高率であった.
- TNF阻害薬群に対するトファシチニブのSIEのHR (95%CI)
- トファシチニブ5mg群:1.17 (0.92~1.50)
- トファシチニブ10mg 1日2回投与群:1.48 (1.17~1.87)
- トファシチニブ10mg 1日2回投与群とTNF阻害薬投与では, すべての感染症とSIEのIR/HRの増加は, 65歳以上の患者の方が50~65歳未満の患者よりも顕著であった.
- SIEの発生確率は, トファシチニブ5mg 1日2回投与とTNF阻害薬投与で, それぞれ18ヵ月目, 6ヵ月目までに増加した.
- NSIの発生確率は, 両方の用量のトファシチニブにおいて6カ月未満で増加した.
- SIEの最も予測能の高い危険因子は, 加齢, ベースラインでのオピオイド使用, 慢性肺疾患の既往, 時間依存的な経口コルチコステロイドの使用であった.
- NSIの最も予測能の高い危険因子は, 性別 (女性) , 慢性肺疾患/感染症の既往, 過去の喫煙, 時間依存的なDAS28, CRPであった.
結論
感染症リスクは, TNF阻害薬に比べトファシチニブでより高かった. この知見は, 今後の治療方針の決定に役立つと思われる.