造血器腫瘍遺伝子パネル検査の「持ち回り協議」、 血液学会の基本方針とは?
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HOKUTO編集部

1ヶ月前

造血器腫瘍遺伝子パネル検査の「持ち回り協議」、 血液学会の基本方針とは?

造血器腫瘍遺伝子パネル検査の「持ち回り協議」、 血液学会の基本方針とは?
日本血液学会は4月21日、 先月 (2025年3月1日) に保険適用となった造血器腫瘍および類縁疾患を対象とした遺伝子パネル検査 (ヘムサイト®) について、  「Fast-track対象遺伝子異常」 に関する中間報告に基づき治療法の選択を行う場合は、 参加者がリアルタイムで協議可能な方法での 「対面式」 エキスパートパネル (EP) 開催に代えて、 メール回覧などの 「持ち回り協議」 を行っても差し支えない*とした厚生労働省の通知があった旨を公式サイトで発表した。 また、  「持ち回り協議」 のあり方について検討し、 基本方針も併せて提示した。
*中間報告に関連して 「持ち回り協議」 を行った症例に関しても、 検査会社からの最終結果やC-CAT調査結果が揃った時点で、 EPの開催が必要とのこと

「持ち回り協議」の基本的な考え方

日本血液学会ゲノム医療委員会では、 中間報告に基づく迅速な治療法の選択における 「持ち回り協議」 のあり方について検討し、 このたび以下の基本的な考え方を提示した。

学会基本方針は2つ

1. 「持ち回り協議」 は、以下のいずれかの場合に開催する。

①分子標的薬の適応決定に関わる遺伝子異常を認める場合*

②臨床試験参加の適格性に関わる遺伝子異常を認める場合に開催する。

2. 癌ゲノム連携病院においては、 中間報告の結果をふまえ、 癌ゲノム中核拠点・拠点病院に 「持ち回り協議」 の開催を依頼する。

*具体的には、 2025年4月1日現在、 以下の3遺伝子が該当する。

1.FLT3 D835 変異

-再発・難治性のFLT3変異陽性急性骨髄性白血病に対するギルテリチニブの使用

2.BRAF V600E 変異

-有毛細胞白血病もしくは組織球症に対するダブラフェニブ/トラメチニブの使用

3.EZH2 Y641 変異

-再発・難治性のEZH2変異陽性濾胞性リンパ腫に対するタゼメトスタットの使用

なお同学会は、 癌ゲノム連携病院からの 「持ち回り協議」 依頼方法や、 癌ゲノム中核拠点・拠点病院から検討結果の返却方法については、 「各施設で検討」 としている。

CDxが存在する遺伝子異常は

EP・持ち回り協議で確認時はCDx不要

また同学会は、 コンパニオン検査 (CDx) が存在する遺伝子の異常について、 「持ち回り協議」 もしくは 「対面式」 EPにおいて確認された場合、 当該遺伝子異常に係る医薬品投与に際して、 改めてコンパニオン検査を用いた遺伝子異常の確認を行う必要はないとした厚生労働省からの通知があった旨も併せて発表した。

「造血器腫瘍遺伝子パネル検査の持ち回り協議に関する基本的な考え方」 を閲覧する

日本血液学会の公式サイト (外部リンク) へ遷移します

補足 : 「Fast-track対象遺伝子異常」 とは

Fast-track対象遺伝子異常については、 日本血液学会の『造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン2023年版』によると、 「急性白血病等の一部の造血器疾患においては、 病勢が急速に進行するなかで、 数日以内にゲノム異常を含む疾患の情報を収集し、 病型に則した治療法を即座に開始することが患者の救命、 長期予後の改善につながる。 従って、 一部の造血器腫瘍においては、 パネル検査の結果を迅速に返却することの臨床的有用性が非常に高い」 とされている。

同ガイドラインでは、 迅速結果返却が望ましい遺伝子異常を 「Fast-track対象遺伝子異常」 とし、 具体的には以下のように定義している。

以下の1、 2、 3の全ての条件を満たす遺伝子異常とする

  1. 十分に臨床的有用性のエビデンスが確立されている : 日本血液学会造血器腫瘍ゲノム検査ガイドラインの 「診断」 もしくは 「予後予測」 におけるエビデンスレベルがA、 または、 「治療法選択」 におけるエビデンスレベルがC以上ᵃ。
  2. 迅速な結果返却が臨床的にきわめて有用である: 迅速な遺伝子情報の返却が診断や治療法選択 (薬剤選択など) 等の臨床判断に大きく影響を与え、 診療方針の決定に重要である。
  3. シークエンス結果の解釈における確実性が担保されており、 かつ病的意義が確立している (ホットスポット変異など) ᵇ。
α 検査提出時に暫定診断である可能性をふまえ、 当該遺伝子異常に関連して日本血液学会 「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン」 に記載されたすべての疾患を対象とする。
b FLT3遺伝子内重複 (ITD) や構造異常 (融合遺伝子、 遺伝子再構成など) はシークエンス結果の解釈が難しい場合があるため、 現状においては対象外とする。 今後、 リアルワールドでのパネル検査の結果が蓄積されるに従い、 その検出精度などの評価に基づき、 順次迅速返却対象への拡大について、 その妥当性の検討が必要である。

「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン2023年版」 を閲覧する

日本血液学会の公式サイト (外部リンク) へ遷移します

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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