海外ジャーナルクラブ
1ヶ月前
Duncanらは、 大脳型副腎白質ジストロフィー (CALD) を対象に、 遺伝子治療薬のelivaldogene autotemcel (eli-cel) による発癌リスクについて、 既に完了した2件の第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(ALD-102/ALD-104)と進行中のフォローアップ試験LTF-304での末梢血検体および骨髄検体を用いて解析を行った。 その結果、 eli-cel投与を受けた患者の約1割に造血器腫瘍が発生した。 本研究はNEJMにて発表された。
遺伝子治療は急速に発展している領域なので、 長期的な有効性や安全性を担保するためにはフォローアップを継続して行うことが肝要です。
eli-celは、 ABCD1の相補的DNAを含むレンチウイルスベクターで形質導入した自家CD34陽性細胞から成る遺伝子治療であり、 CALDに対する臨床試験において、 既に有効性が示されている。 しかし、 eli-cel投与に伴う発癌リスクは明らかにされていない。
ALD-102試験およびALD-104試験の患者と、 両試験の患者を対象に進行中のフォローアップ試験LTF-304試験において、 eli-celによる治療を受けたCALD患者67例を対象とした。
これらの患者から採取した末梢血検体および骨髄検体を用いて、 遺伝子挿入部位解析、 遺伝子研究、 フローサイトメトリーを実施した。 さらに、 形態学的研究も行った。
造血器腫瘍の発生は7/67例だった。
内訳は以下の通りであった。
データが入手できた6例では、 複数の遺伝子座*において、 レンチウイルスベクターが挿入されたクローンが優勢だった。
また、 7例中6例に体細胞遺伝子変異**が、 7例中1例には7番染色体のモノソミーが認められた。
過剰芽球を伴うMDS、 または単一血球系統の異形成を伴うMDSを発症し、 同種造血幹細胞移植 (HSCT) を受けた5例中4例はCALDを再発せず、 MDSも発症が認められない状態が持続した。
AML患者は生存しており、 造血幹細胞移植後 (HSCT) に完全ドナーキメリズムの獲得が認められた。 MDS 患者も生存しており、 HSCTの待機中だった。
著者らは 「eli-cel投与を受けた患者67例中7例が造血器腫瘍を発症した。 これらの症例では、 遺伝子治療で使用されたベクターの癌遺伝子への挿入や、 治療後の体細胞に生じる新たな遺伝子変異が、 癌の発症に関与している可能性を示唆している」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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