HOKUTO編集部
4ヶ月前
2024年7月に発表された『大腸癌治療ガイドライン 医師用2024年版』 (以下、 2024年版)¹⁾の改訂ポイントを薬物療法中心に解説する。 今回は、 大きく分けて周術期と遠隔転移再発のそれぞれにおいて重要な変更点があった。 本稿では、 周術期関連に関しての改訂の注目ポイントを解説する。
2024年版では、 新たに周術期薬物療法前のバイオマーカー検査に関する項目が追加され、 RAS、 BRAF、 ミスマッチ修復機能 (MMR) 欠損の検査を行うことが弱く推奨された。
特に、 stageⅡ/Ⅲにおける術後療法に関しては、 MSI-HもしくはdMMRではフッ化ピリミジン単剤による術後療法のベネフィットが統合解析により手術単独と比較して示されなかった²⁾ことから、 治療開始前のMMR欠損の検査が強く推奨されている。
直腸癌へのTotal Neoadjuvant Therapy (TNT) は欧米を中心に切除可能直腸癌に対して術前化学放射線療法 (CRT) に加えて、 術後療法として行われる化学療法を術前に行う戦略である。 化学療法による遠隔転移の制御をより効果的に加えることができ、 放射線療法による局所制御とともに長期生存を期待できる治療戦略として注目されている。
欧米では大きな試験が3つ行われており(PRODIGE-23³⁾、 RAPIDO⁴⁾、 STELLAR⁵⁾ ; Beyond the evidence参照)、 この結果からESMOやNCCNガイドラインにおいて局所進行直腸癌に対する標準治療の一つであると記載されている。
しかしこれらの試験において、 レジメンや放射線照射が異なっており、 最適なレジメンや放射線照射量などが不明瞭である。 またいずれの試験においても高いpCRが得られているが、 長期生存 (全生存期間 : OS) への影響に関しては不十分な部分が多い。 また放射線照射後の手術の難易度や術後合併症率などの比較も存在していない。 そして何よりも本邦からのデータは乏しい現状である。
このことからTNTは有望な有効性が期待されるものの、 本邦での標準治療に対しての有効性や安全性への検討が不十分であり、 行わないことを弱く推奨すると結論付けられている。
またTNTにより術前治療で臨床的な完全奏効(cCR)が得られた患者に慎重な経過観察を行うことで、 手術なしで経過をみるNon-Operating Management (NOM) にも注目が集まっており、 こちらも欧米では積極的に検討されている戦略である。
しかしこちらに関してもやはり長期的な治療成績の結果が不足しており、 NOM後に再発が判明した症例での手術ではQOLや機能的な転機が悪化する可能性も指摘されている。 適切な候補を特定する客観的な標準化がなされていないことから、 やはり行わないことを弱く推奨すると結論付けられている。
旧版のガイドラインでは肛門管扁平上皮癌に関する記載はなかったが、 今回の改訂で初めて肛門管扁平上皮癌に関する記述が追記されている。
肛門管扁平上皮癌ではCRTの感受性が高く、 永久人工肛門を回避できるという利点から、 遠隔転移を有さないT2-T4およびN1-3症例には外科切除ではなく根治的CRTが標準治療として確立されている。
化学療法のレジメンとしてはフルオロウラシル (5-FU) +マイトマイシン (MMC) 療法やカペシタビン (Cape) +MMC療法、 FP (5-FU+シスプラチン) 療法などが選択肢となっている。 これらの治療成績は非常に良好であり、 3年全生存割合は化学放射線療法において80%を超える報告がされている⁶⁾。
肛門管扁平上皮癌に対しての手術はあくまで救済手術がメインとなっており、 今回のガイドラインではこれらが明文化され、 化学放射線療法を行うことを強く推奨すると結論付けられている。
NOMを目指した切除可能直腸癌におけるTNTでの最適なレジメンと放射線照射は?
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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