転移性乳癌患者において、 パクリタキセルの週1回投与の効果を、 パクリタキセルの3週毎投与を対照に検証した第Ⅲ相無作為化比較試験CALGB protocol 9840の結果より、 奏効率と無増悪期間 (TTP) に対する有益性が示された。
原著論文
▼解析結果
Randomized phase III trial of weekly compared with every-3-weeks paclitaxel for metastatic breast cancer, with trastuzumab for all HER-2 overexpressors and random assignment to trastuzumab or not in HER-2 nonoverexpressors: final results of Cancer and Leukemia Group B protocol 9840. J Clin Oncol. 2008 Apr 1;26(10):1642-9. PMID: 18375893
CALGB protocol 9840試験の概要
対象
転移性乳癌患者
方法
① 175例が2群に6:4で割り付けられた (HER2検査をせず、 無作為に割付)
② その後プロトコールが改正され、 HER2検査が義務付けられた。 HER-2陽性患者にはトラスツズマブ2mg/kgが毎週投与され、 HER-2陰性患者にはトラスツズマブ投与群と非投与群に1:1で無作為に割り付けられた
- 1W群 (355例:119例はHER-2検査未施行、 236例はHER-2検査施行)
パクリタキセル80g/m²を毎週投与
- 3W群 (230例:56例はHER-2検査未施行、 174例はHER-2検査施行+161例:CALGB 9342試験)
パクリタキセル175㎎/m²を3週毎に投与
下記、HER-2検査施行例の内訳
- HER2 (-) 1W-トラスツズマブ群:68例
- HER2 (-) 3W-トラスツズマブ群:50例
- HER2 (-) 1W+トラスツズマブ群:66例
- HER2 (-) 3W+トラスツズマブ群:48例
- HER2 (+) 1W+トラスツズマブ群:102例
- HER2 (+) 3W+トラスツズマブ群:76例
目的
- HER2の発現、 トラスツズマブの有無に関係なく、 パクリタキセル毎週投与がパクリタキセル3週毎投与よりも奏効率を高くするか。
- パクリタキセルのスケジュールに関係なく、 トラスツズマブがHER2陰性患者において奏効率を有意に改善させるか。
評価項目
- 主要評価項目:奏効率
- 副次評価項目:TTP、 全生存期間 (OS) 、 安全性
CALGB protocol 9840試験の結果
奏効率
全患者
(95%CI 37-47%)
(95%CI 25-34%)
オッズ比 1.75 (95%CI 1.28-2.37)、 p=0.0004
HER2陰性患者 (1Wと3Wの比較)
- HER2 (-) 1W+トラスツズマブ群、 HER2 (-) 1W-トラスツズマブ群:42%
(95%CI 34-51%)
- HER2 (-) 3W+トラスツズマブ群、 HER2 (-) 3W-トラスツズマブ群:24%
(95%CI 16-34%)
オッズ比 2.28 (95%CI 1.27-4.08)、 p=0.0053
HER2陰性患者 (トラスツズマブ有無による比較)
- HER2 (-) 3W+トラスツズマブ群、 HER2 (-) 1W+トラスツズマブ群:38%
(95%CI 29-48%)
- HER2 (-) 3W-トラスツズマブ群、 HER2 (-) 1W-トラスツズマブ群:32%
(95%CI 23-41%)
オッズ比 1.35 (95%CI 0.78-2.34)、 p=0.28
HER2陽性患者 (1Wと3Wの比較)
(95%CI 45-65%)
(95%CI 46-69%)
オッズ比 0.89 (95%CI 0.49-1.63)、 p=0.71
TTP中央値
全患者
HR 1.43、 p<0.0001
HER2陰性患者 (トラスツズマブ有無による比較)
- HER2 (-) 1W+トラスツズマブ群、 HER2 (-) 3W+トラスツズマブ群:7ヵ月
- HER2 (-) 1W-トラスツズマブ群、 HER2 (-) 3W-トラスツズマブ群:6ヵ月
p=0.28
OS中央値
全患者
HR 1.28 (95%CI 1.06-1.54)、 p=0.0092
HER2陰性患者 (トラスツズマブ有無による比較)
- HER2 (-) 1W+トラスツズマブ群、 HER2 (-) 3W+トラスツズマブ群:1.8年
- HER2 (-) 1W-トラスツズマブ群、 HER2 (-) 3W-トラスツズマブ群:1.8年
p=0.65
有害事象 (AE)
- Grade3以上の顆粒球減少症は3W群で15%、 1W群で9%でみられた (p=0.017) 。 入院を必要とする発熱性好中球減少はいずれのスケジュールでも稀であった (それぞれ4%、 3%) 。
- 1W群で多くみられたのは、 Grade2、 3の感覚神経障害 (p=0.0046) 、 Garde2、 3の運動ニューロパチー (p=0.013)だった 。
著者らの結論
- 転移性乳癌患者において、 パクリタキセルの週1回投与は3週間毎投与よりも、 奏効率が高く、 TTPが長いことが示された。
- トラスツズマブはHER2陰性患者に対し有効性は認められなかった。