インタビュー
7日前

誰しも立ち止まり、 迷い、 そして踏み出した人生の瞬間がある。 医師の原点や転換点にフォーカスするインタビュー企画 「Doctor’s Career」。 今回は、 関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座助教の勝島詩恵先生 (久留米大卒) に話を聞いた。 (全4回の第3回)
市中病院の呼吸器内科にいた時、 実は 「リハビリの力ってすごい!」 と感じていた。 理学療法士と連携しながら治療に当たり、 薬に頼りがちな治療の中で、 体位変換や呼吸介助によって無気肺を治す姿を見てきたからだ。
そんな折、 呼吸器リハビリのエキスパートである大垣市民病院 (岐阜県) 呼吸器内科の安藤守秀先生 (現・副院長) を訪ねる機会があった。 30代半ばのことだ。
安藤先生には 「30代では自分の進むべき道をしっかり見定め、 40代になったらその道をまっすぐ進みなさい」 とアドバイスを受けた。

「安藤先生の言葉を何度も頭の中で繰り返し、 これまでに亡くなったバーテンダーの患者さん (第2回参照) たちのことを思い返しました。 そこで自分の生きていく道を決めました」
それは、 腫瘍内科医として 「がんのリハビリテーション」 を追求することーー。
「どんなに頑張って治療しても根治が難しいがん患者にとって、 その時々で最も良い状態を引き出しながら、 徐々に降下して一緒にソフトランディングするのが私の役目だと考えました」

すると、 気持ちがふっと軽くなった。
「今までは、 患者さんの最期にただただ泣いて、 反省と後悔しかありませんでした。 でも、 そんな場面で患者さんに『お疲れさま』と言える自分になれたら、 がん診療医として役目を果たしたことになるのかもしれない。 そう思うと、 救われた気持ちになりました」
そんな中、 訪問診療医としてがん患者の終末期医療に携わる機会があった。 以前病院で診ていた患者を在宅で看取る経験をし、 今の自分の医療観を育む糧となった。

「そこからは、 奇跡的な出会いの連続でした」
2020年ごろ、 がんリハビリでトップの慶應義塾大学・辻哲也教授に相談した。 辻教授は、 「関西でがんリハビリを展開したいなら、 私の恩師である関西医科大学の長谷公隆教授を訪ねるといい」 と教えてくれた。
長谷教授に 「関西医大でがんリハビリをしたい」 とメールを送付すると快諾された。 大学病院での勤務が初めてだったこともあり、 常勤ではなく非常勤の研究員という立場で赴任することとなった。
「私が赴任した2週間後、 新設したフレイル外来を任せてくれました。 長谷教授は本当に大海原のような人です」

さらに、 リハビリテーション医学講座で研究員をしていた理学療法士から 「がんリハビリの研究を一緒にしませんか」 と声をかけてもらった。 そこから、 医師、 作業療法士、 理学療法士、 看護師といった職種を超えた研究者、 さらには大学も超えた研究仲間の輪が広がった。
「関西医大に一人でポツンとやってきた私が、 今の研究や体制が作れるようになった。 私一人の力では不可能でした。 繰り返しになりますが、 奇跡のような出会いのおかげです」

さらには徳島大学の今井芳枝教授の論文に出会い、 メールを送ったことがきっかけで、 質的研究の師匠を得ることもできた。 今井教授からも研究の輪が広がっている。
2022年には、 関西医科大の呼吸器腫瘍内科助教に就任。 呼吸器のがん患者を診ながらがんリハビリに携わっている。
「大学では論文執筆や学会での発表を重ね、 博士号の学位を取得することもできました。 思ってもいない展開でした」

がんリハビリに携わる医師はまだ多くはないが、 ニーズがあることも確かだ。 早期から多職種が介入し、 身体機能や栄養状態、 精神面の維持をする――。
「運動療法・栄養療法による低コストの介入が、 進行がん治療に寄与するというエビデンスを積み上げています。 最終的には外来がんリハビリテーションが診療報酬に算定されることを目指しています」
同じ志を持つ医師が増えることを目指し、 これからも発信を続けていく。


編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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