海外ジャーナルクラブ
4ヶ月前
Richardsonらは、 高齢の急性骨髄性白血病 (AML) を対象に、 アントラサイクリン系化学療法とメチル化阻害薬を用いた治療後の在宅療養日数について後ろ向きコホート研究で検証した。 その結果、 メチル化阻害薬による治療では生存期間が短縮する一方、 在宅療養期間は延長することが示された。 本研究はJAMA Oncolにて発表された。
"Home time=家でいられる時間"をアウトカムにした非常に斬新な研究です。 この言葉は論文全体で80回以上も繰り返されており、 強い印象を残します。
AML患者は、 在宅療養期間を治療方針の決定における重要因子として認識している。 しかし、 高齢AMLにおける在宅療養期間について、 適切に説明が行われた研究はこれまで存在しない。
本研究は、 高齢AMLに対する2つの標準治療 (アントラサイクリン系化学療法、 メチル化阻害薬) における在宅療養期間を比較することを目的に実施された。
2004~2016年に新規に診断された66歳以上の成人AML患者* : 7,946例
選択された治療により、 患者は以下の3群に層別化された。
- アントラサイクリン系化学療法群:2,824例
- メチル化阻害薬群 :2,542例
- 化学療法群:2,580例
主要評価項目
在宅療養時間とした。
評価基準
生存者日数から病院および介護施設で過ごした総人員日数を差し引き、 総人員日数で割って定量化した。
治療法による重み付けの安定化逆確率を用いた重み付け多項回帰モデルを用いて、 調整在宅時間を推定した。
生存期間の中央値は、メチル化阻害薬群よりもアントラサイクリン系化学療法群で長かった。
- アントラサイクリン系化学療法群:11.0ヵ月
- メチル化阻害薬群:8.0ヵ月
在宅療養率
全患者における治療1年目の調整後在宅療養率は52.4%だった。 治療別では、 メチル化阻害薬群で60.8%と最も高く、 アントラサイクリン系化学療法群は51.9%だった。
在宅総日数
生存期間中央値が短いにもかかわらず、 メチル化阻害薬群はアントラサイクリン系化学療法群に比べ、 治療1年目の在宅総日数が平均で33日長かった (222日 vs 189日)。
著者らは 「本研究の結果から、 アントラサイクリン系化学療法によって得られる生存期間の延長は、 入院または介護施設への入所によって完全に相殺されることが示唆された」 と報告した。
<出典>
1) 日本血液学会:造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。