HOKUTO編集部
3ヶ月前
吉村祐輔先生 (虎の門病院 腎センター内科・リウマチ膠原病科) らのグループは、 CKDを合併した関節リウマチ (RA) に対する生物学的製剤の有効性および安全性について世界初の網羅的検討を行った。
生物学的製剤の36ヵ月継続率は腎機能低下群や血液透析群でも概ね保たれ、 メトトレキサート (MTX) や非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) の使用が制限されるCKD合併RA患者において生物学的製剤が治療の切り札となる可能性が示された。 本研究の成果はAnn Rheum Dis. に掲載された。
筆頭著者の吉村先生に解説いただきました
RA患者は、 RAに伴うアミロイドーシス、 RAの治療に使われるタクロリムスやNSAIDs等による腎障害、 RAの慢性炎症に関連した動脈硬化や貧血などに起因してCKDの有病率が高いことが知られ、 臨床の場でCKD合併RA患者を診療する機会は多い。
しかし、 CKD合併RAの管理には"薬物療法の選択肢が制限される"という難しさがある。 特に RA治療のアンカードラッグであるMTXは、 eGFR<60 mL/min/1.73 m²で慎重投与、 <30で禁忌となってしまう。
MTX等の使用が制限されるCKD合併RAの管理において、 生物学的製剤 (TNFα阻害薬・IL-6阻害薬・CTLA4-Ig製剤) の役割が期待される。 しかし、 RAに対する生物学的製剤の臨床試験では腎障害合併例・透析例が除外されており、 有効性・安全性についての知見が確立されていなかった。
そこで、 CKD合併RA患者における生物学的製剤の有効性・安全性を、 本研究では初めて網羅的に検討した。
主要評価項目は、 first-line*の生物学的製剤の有効性・安全性の総合的指標とされる薬剤継続率とした。 また、 生物学的製剤後の疾患活動性 (DAS28-CRP・DAS28-ESR) とPSL併用量の推移、 および薬剤中止理由も解析した。
腎機能正常群と比較して、 CKD合併群における生物学的製剤の36ヵ月継続率に有意差がないことが示された。 透析群でも継続率は保たれた。
また、 一般にCKDは感染症のリスクとなるが、 eGFR<30でも感染による生物学的製剤中止のリスクは上昇しないことが示された。 生物学的製剤導入後には製剤・腎機能によらずRAの疾患活動性が抑制され、 かつプレドニゾロン併用量を減らせる傾向があることも示された。
これらの結果から、 CKD合併RA患者において生物学的製剤は有効かつ安全に使用できると考えられる。
薬剤ごとの継続率をみると、 TNFα阻害薬はeGFR<30で継続率がやや低下した。 特に無効による中止のリスクがIL-6阻害薬よりも有意に高かった。
TNFα阻害薬はMTX併用下で有効性が示されている一方、 IL-6阻害薬は単剤でも有効とされており、 MTXが禁忌となるeGFR<30ではIL-6阻害薬の優位性が示されたものと思われる。
とはいえ、 eGFR<30におけるTNFα阻害薬の36ヵ月継続率は34.0%と臨床的に許容され得る数字で、 どの製剤もいずれは2次無効を迎えることを鑑みれば、 TNFα阻害薬を含めた生物学的製剤がCKD合併RA患者へのキードラッグになり得ると考えられる。
CKD合併RAの活動性を抑えることは、 単にRAの症状を軽減するのみならず、 RAの慢性炎症等を介したCKDの進展を抑制する意味でも重要である。 感染等のリスクに留意しつつ、 生物学的製剤を適切に取り入れることが、 CKD合併RAの良好な管理につながると考えられる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。