HOKUTO編集部
3ヶ月前
高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫に対する抗CD38抗体ダラツムマブ単剤投与の有効性について、 積極的経過観察を対照に検証した第Ⅲ相無作為化比較試験AQUILAの主解析結果より、 多発性骨髄腫への進行を予防または遅延させることが示された。 ギリシャ・National and Kapodistrian University of AthensのMeletios A. Dimopoulos氏が発表した。 同結果の詳細はN Engl J Med. 2024年12月9日オンライン版に同時掲載された。
くすぶり型多発性骨髄腫 (SMM) は、 無症候性の活動性多発性骨髄腫 (MM) の前駆疾患である。 現在は承認された治療法がなく、 臓器障害が出現するまでは経過観察のみが標準的な治療法となる。
ダラツムマブは、 再発・難治性のMM (RRMM) に対する単剤療法や、 RRMMおよび初発のMMに対する標準治療との併用療法として承認されている。 第Ⅱ相試験CENTAURUSにおいて、 中間リスクまたは高リスクのSMMに対するダラツムマブが有望な活性と忍容性を示した結果¹⁾を踏まえ、 第Ⅲ相試験AQUILAでは、 ダラツムマブが経過観察と比較して、 MMへの進行を遅延させるかどうかを検証した。
同試験の対象は、 診断されてから5年以内でクローナルな骨髄中形質細胞 (BMPC) ≧10%と1つ以上のリスク因子*を有する18才以上のSMM患者とされた。
390例が以下の2群に1 : 1で無作為に割り付けられた。
主要評価項目は無増悪生存期間 (PFS) *で、 副次的評価項目は奏効率 (ORR)、 MMに対する1次治療までの期間、 MMに対する1次治療のPFS (PFS2)、 全生存期間 (OS) であった。
年齢中央値、 性別、 SMMの病型などの患者背景は両群間で概ねバランスが取れていた。SMMの診断から無作為化までの期間中央値はダラツムマブ群0.80年、 経過観察群0.67年で、 Mayo2018リスク分類の高リスクに該当する患者はそれぞれ37.1%、 43.9%であった。
追跡期間中央値65.2ヵ月において、 PFS中央値はダラツムマブ群で未到達 (NR) であり、 経過観察群の41.5ヵ月に比べて有意な改善を認めた(HR 0.49、 95%CI 0.36-0.67、 p<0.001)。
24ヵ月PFS率/60ヵ月PFS率はそれぞれ、 ダラツムマブ群で79.9%/63.1%、経過観察群で63.3%/40.8%だった。
PFSサブグループ解析においても、 Mayo 2018リスク分類の低/中間/高リスクを含む、 事前に規定された全サブグループにおいて、 ダラツムマブ群の経過観察群に対する優位性が一貫して認められた。
またMayo 2018リスク分類で高リスクの患者におけるPFS中央値は、 ダラツムマブ群でNRであり、 経過観察群の22.1ヵ月に比べて最も顕著な改善が見られた (HR 0.36、 95%CI 0.23-0.58)。 さらに、 ダラツムマブの効果は治療終了後も維持されることが示された。
ORRは経過観察群2.0%に対し、 ダラツムマブ群では63.4%と有意な改善を認めた (オッズ比 83.80、 95%CI 29.69-236.54、 p<0.001)。
MMに対する1次治療が開始された患者割合は、 ダラツムマブ群で33.2%、 経過観察群では53.6%であった。 また、 無作為化から1次治療開始までの期間の中央値はそれぞれNR、 50.2ヵ月と、 ダラツムマブ群でMM治療開始までの期間が延長していた (HR 0.46、 95%CI 0.33-0.62)。
60ヵ月時PFS2率は、 ダラツムマブ群85.9%、 経過観察群78.0% (HR 0.58、 95%CI 0.35-0.96) であり、 また60ヵ月時OS率はダラツムマブ群93.0%、 経過観察群86.9% (HR 0.52、 95%CI 0.27-0.98) と、 ダラツムマブの早期介入によりPFS2、 OSも改善傾向を示した。
治療中に発現したGrade3/4のAE (TEAE) は、 ダラツムマブ群で40.4%、 経過観察群で30.1%であり、 重篤なTEAEはそれぞれ29.0%、 19.4%だった。 治療中止に至ったTEAEの発現率はダラツムマブ群では5.7%と低く、 新たな安全性の懸念事項は指摘されなかった。
以上より、Dimopoulos氏は 「高リスクのSMMにおいて、 ダラツムマブ単剤療法による早期介入は、 経過観察と比較しMMへの進行を予防または遅延させることが示された。 本試験の結果は、 高リスクSMM患者に対し、 ダラツムマブによる早期介入を強く支持するものである」 と報告した。
¹⁾ Leukemia. 2020 Jul;34(7):1840-1852.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。