HOKUTO編集部
29日前
日本糖尿病学会は4月15日、 「AKT阻害薬カピバセルチブ使用時の高血糖・糖尿病ケトアシドーシス発現についての注意喚起」 を同学会公式サイトで発出した。 本ステートメントでは、 インスリン分泌の高度低下症例へのカピバセルチブ投与に際して、 「投与初日からのより綿密な血糖値等のモニタリング」 など3つの対応策が示された。 また同日、 日本乳癌学会もこれに関して補足事項を発表した。
日本糖尿病学会は、 インスリン分泌高度低下症例へのカピバセルチブ投与に際して、 以下の3点を対応策として挙げた。
併せて同学会は、 「急激な血糖値上昇のリスクや大量のインスリン投与を要する可能性も想定し、 診療にあたっていただきたい」 と呼びかけた。
本剤承認の根拠となった第III相試験CAPItello-291¹⁾などの臨床成績を踏まえて作成された適正使用ガイド (外部リンク) では、 投与開始後1ヵ月間は2週間ごと、 その後も1ヵ月ごとの空腹時血糖値の測定、 3ヵ月ごとのHbA1cの測定を推奨している。 それにも関わらず、 上記の対応策が示された理由として同学会は以下を挙げた。
加えて、 CAPItello-291試験では、 1型糖尿病またはインスリンの投与を必要とする2型糖尿病患者およびHbA1c8.0%以上の患者は除外されていたことから、 上記の対応策が示されるに至ったとのこと。
日本乳癌学会は、 補足事項として表明した見解のなかで、 同様にDKAを発症した症例が上記の他にもう1症例あり、 これらの症例はそれぞれ再発病変に対する10次治療、 8次治療としてカピバセルチブが投与されていたとして、 CAPItello-291試験の適応基準 (主に2次治療から3次治療での使⽤) に沿った治療を⾏うよう注意喚起した。
適応基準を守った場合でも、 「⾼⾎糖やDKA が発⽣する可能性はあり、 注意深い経過観察が必要であることには変わりはない」 としながら、 「その場合の検査スケジュールは推奨されているものでよい」 とのスタンスを示した。 また、 「やむを得ずCAPItello-291試験の適応基準外の投与となった場合には、 検査や診察を含め厳重な経過観察が必要」 としている。
さらに、 「⾼⾎糖に関してGrade2以上の有害事象が発⽣した場合は、 関係各科と緊密に連絡をとりながら厳重な経過観察が必要」 と言及した。
カピバセルチブは、 「内分泌療法後に増悪したPIK3CA 、 AKT1 又はPTEN 遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」 を効能・効果として本邦で2024年5月22日に発売された世界初の経口AKT阻害薬である。
AKTを阻害することで、 骨格筋や脂肪組織でのグルコースの取り込み、 肝臓でのグリコーゲンの貯蔵が抑制され、 血糖値の上昇を引き起こす可能性があるとされている。
このため、 高血糖が特徴的な副作用として認められ、 一部の症例ではDKAの発症および重症化がみられ、 大量の経静脈的インスリン投与によっても血糖マネジメントが困難な症例も報告されている。
CAPItello-291試験では、 有害事象として16.9%に高血糖を認めており、 本邦の市販直後調査でも高血糖関連事象が33例報告され、 そのうち1例がDKAにより死亡に至っている (詳細は上記太字参照)。
1.N Engl J Med. 2023; 388: 2058-2070.
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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