Lawson A、らは、 60歳以上の橈骨遠位端骨折患者を外科治療・保存治療の2群に分け、 24ヵ月後の転帰改善を多施設共同無作為化臨床試験と並行観察研究の二次解析で検討した. 結果、 外科治療群の患者転帰は保存治療群よりも必ずしも優れていないことが示唆された. 本研究はJAMA Surg誌において発表された.
研究デザイン
背景
- 60歳以上の橈骨遠位端骨折患者において、 12ヶ月時点での外科治療群の患者転帰は保存治療群よりも必ずしも優れていない可能性が報告されている.
- 本研究では、24ヶ月時点における外科手術の有用性を検証した.
研究対象
- 対象 : 60歳以上の橈骨遠位端骨折患者300名
- 無作為化を許諾した166名を以下の2群に無作為に割り付けた.
- 外科治療 (掌側ロッキングプレートを用いた観血的整復固定術:VLP群)
- 保存治療 (非観血的整復固定術+ギブス固定:CR群)
- 無作為化を拒否した134名は、 同じ治療オプションとフォローアップで並行観察群に組み入れた.
評価項目
- 患者は盲検化された評価者により、 3、12、24ヶ月で追跡調査された.
- 主要評価項目:Patient-Rated Wrist Evaluation (PRWE) 質問票による評価.
- 副次的評価項目:健康関連QOL、 手首の痛み、 患者報告による治療の成功、 患者評価による外見の煩わしさ、 治療後の合併症.
研究結果
追跡を完遂したRCT患者151名の解析結果
- 24ヶ月時点の平均PRWEスコアに臨床的に重要な差は生じなかった.
- VLP群:13.6点 (95%CI 9.1~18.1)
- CR群:15.8点 (95%CI 11.3~20.2)
- (平均差 2.1、 95%CI -4.2~8.5、 P=0.50)
- 患者報告による治療の成功はVLP群が優れていた.
- VLP群:72人中54人 (75.0%)
- CR群:74人中33人 (44.6%)
- 他のすべての転帰に群間差はなかった.
治療後合併症の発生率は各群で低かった
- 深部感染
- VLP群:75例中0例
- CR群:76例中1例 (1.3%)
- 複合領域疼痛症候群
- VLP群:75例中1例 (1.3%)
- CR群:76例中2例 (2.6%)
HOKUTO編集部コメント:24ヶ月時点の試験結果は、 過去に報告された12ヶ月時点の結果および観察群の結果と一致したようです. これらの結果から、 60歳以上の患者では、 掌側固定プレートによる外科治療は、 12ヶ月および24ヶ月の非外科的治療に比べ機能的利点はないことが示唆されました.
原著
Lawson A、 et al、 Plating vs Closed Reduction for Fractures in the Distal Radius in Older Patients: A Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial. JAMA Surg. 2022 Apr 27;e220809. PMID: 35476128