筋層浸潤性尿路上皮癌患者において、 周術期のdd-MVAC療法 (メトトレキサート、 ビンブラスチン、 ドキソルビシン、 シスプラチン) の効果を、 GC療法 (ゲムシタビン、 シスプラチン) を対照に検証した第Ⅲ相比較試験VESPERの結果より、 術前化学療法として行った際の3年時の無増悪生存期間 (PFS) に対する有効性が示された。
原著論文
▼解析結果
Dose-Dense Methotrexate, Vinblastine, Doxorubicin, and Cisplatin or Gemcitabine and Cisplatin as Perioperative Chemotherapy for Patients With Nonmetastatic Muscle-Invasive Bladder Cancer: Results of the GETUG-AFU V05 VESPER Trial. J Clin Oncol. 2022 Jun 20;40(18):2013-2022. PMID: 35254888
関連レジメン
ddMVAC
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GC triweekly
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VESPER試験の概要
対象
筋層浸潤性尿路上皮癌患者
方法
493例を以下の2群に1:1で割り付けた。
メトトレキサート30mg/m²をday1、 ビンブラスチン3mg/m²をday2、 ドキソルビシン30mg/m²をday2、 シスプラチン70mg/m²をday2に投与+G-CSF製剤をday3-9、 2週毎に6サイクル実施
ゲムシタビン1250mg/m²をday1、 8、 シスプラチン70mg/m²をday1に投与、 3週毎に4サイクル実施
評価項目
- 主要評価項目:3年時のPFS
- 副次評価項目:3年時の無増悪期間 (TTP) 、 全生存期間 (OS) 、 安全性
VESPER試験の結果
患者背景
- 術前化学療法は437例、 術後化学療法は56例に行われた。
- 術前化学療法として、 dd-MVAC群では60%が6サイクル、 GC群では84%が4サイクルを完了。 その後それぞれ91%と90%の患者が膀胱切除術を受けた。 病理学的完全奏効 (pCR:ypT0pN0) は、 dd-MVAC群で42%、 GC群で36%で観察された (p=0.2) 。
- 術後化学療法として、 dd-MVAC群では40%が6サイクル、 GC群では81%が4サイクルを完了。
3年時のPFS率
全患者
HR 0.77 (95%CI 0.57-1.02)、 p=0.066
術前化学療法
HR 0.70 (95%CI 0.51-0.96)、 p=0.025
術前化学療法後に膀胱摘出術を受けた患者における、 3年時PFS率の多変量解析
- ypTis、 Ta、 T1およびypN0の患者 vs pCRの患者
HR 1.13 (95%CI 0.53-2.39)
HR 2.61 (95%CI 1.38-4.95)
HR 10.3 (95%CI 6.37-16.8)
3年時のTTP率
全患者
HR 0.68 (95%CI 0.50-0.93)、 p=0.014
術前化学療法
HR 0.62 (95%CI 0.44-0.85)、 p=0.005
OS
5年間の追跡調査後に報告される予定
有害事象 (AE)
- 腎不全のため化学療法を中止したのは、 dd-MVAC療法11例、 GC療法12例であった。
- グレード3以上のAEは、 ddMVAC群で52%、 GC群では55%で報告された。
- ddMVAC群で多くみられたのは、 重度の貧血 (p<0.001) 、 倦怠感 (p<0.001) 、 嘔吐・嘔気 (p=0.003) であった。
著者らの結論
筋層浸潤性尿路上皮癌患者において、 ddMVAC療法はGC療法と比較し、 3年時のPFS率を改善させた。 さらに術前化学療法においては、 ddMVA療法は3年時のPFS率が有意に高く、 良好な局所コントロールが得られることが示された。