亀田総合病院
1年前
慢性閉塞性肺疾患 (Chronic obstructive lung disease:COPD) は、 タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することにより生じる肺疾患です。 今回はCOPDの治療の基本について解説します。
気管支拡張薬には、 長時間作用性抗コリン薬 (long-acting muscarinic agonis: LAMA) と長時間作用性β2刺激薬 (long-acting β-agonists :LABA) の2剤があります。 通常LAMAで治療を開始し、 症状の改善が乏しい場合は、 LAMA/LABAを選択します。
多くの患者はLAMA/LABAで咳嗽や喀痰、 呼吸困難などの症状が軽快しますが、 時にLAMA/LABAを投与するも症状が残存する場合があります。 この場合は、 まず吸入ステロイド (Inhaled corticosteroid:ICS) 追加の適応がないかを考えましょう。
COPDにおけるICSの適応を以下に示します。 末梢血好酸球数≧300/μL、 中等度増悪が年に2回以上、 入院を要する増悪の既往、 喘息合併・既往がある場合は、 ICSが強く推奨されます。
COPDにおけるICSの適応
特に末梢血好酸球数≧300/μLが重要であり、 この基準を満たす患者では、 ICSを追加することで咳嗽や喀痰が軽快する事が多いです。
COPDに喘息が合併しているかについての評価は、 喘息とCOPDのオーバーラップ (Asthma and COPD Overlap:ACO) の手引きに記載されたACOの診断基準を参考にしましょう²⁾。 「喘息の特徴」に示された項目を参考にして、 COPD患者に喘息が合併しているかを評価します。
ACOの診断は、 基本項目とCOPDの特徴+喘息の特徴を満たす場合に診断する。 COPDの特徴のみあてはまる場合はCOPD、 喘息の特徴のみあてはまる場合は喘息 (リモデリングのある) と診断する。
ICSは、 肺炎のリスクになりますので³⁾、 特に喘息病態非合併例に対するICSの適応については、 上記の基準に基づき判断して、 安易にICSを使用しないようにしましょう⁴⁾。
基本的には好酸球 300/uL以上というのがICSの有効性が高い患者選択の指標となります。
また、 ICSを導入後に、 無効な場合や肺炎をきたした場合は、 ICSの中止を検討しましょう⁴⁾。
LAMA/LABA投与後に、 咳嗽や喀痰が残るも、 ICSの適応がない場合は、 逆流性食道炎や後鼻漏など他の咳嗽をきたす疾患がないかを評価しましょう。
この場合、 他の原因が明らかでなければ、 鎮咳薬や喀痰調整薬などで対症療法を行うことが多いです。
COPDに対して、 ICSを追加する場合は、 ほとんどの場合、 トリプル吸入製剤 (ICS/LAMA/LABA) を使用することになります。 DPIのテリルジー®とpMDIのビレーズトリ®が販売されています。
①ドライパウダー製剤 (DPI)
テリルジー® (フルチカゾンフランカルボン酸エステル・ウメクリジニウム臭化物・ビランテロールトリフェニル)
②加圧式定量噴霧式吸入器 (pMDI)
ビレーズトリ® (ブデソニド・グリコピロニウム臭化物・ホルモテロールフマル酸塩水和物)
テリルジー®は1日1回1吸入であるため、 吸入アドヒアランス向上に有効と考えられます。 一方で、 DPIであるテリルジー®は、 吸気流速が不十分の場合、 有効な吸入ができません。 一般に、 高齢になるほど吸気流速は低下します⁵⁾。
非高齢者では1日1回で吸入可能なテリルジー (=DPI) を選択し、 吸気流速が低下している高齢者 (75歳以上が目安) では、 DPIの吸入が困難な場合が多いので、 ビレーズトリ® (=pMDI) を選択するようにしています。
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一言 : 当科では教育および人材交流のために、 日本全国から後期研修医・スタッフ (呼吸器専門医取得後の医師) を募集しています。 ぜひ一度見学に来て下さい。
連絡先 : 主任部長 中島啓
メール : kei.7.nakashima@gmail.com
中島啓 X/Twitter : https://twitter.com/keinakashima1
亀田総合病院呼吸器内科 Instagram : https://www.instagram.com/kameda.pulmonary.m/
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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