海外ジャーナルクラブ
4ヶ月前
がん研究会有明病院の大隅寛木氏の消化器化学療法科の大隅寛木氏、 篠崎英司氏、 山口研成氏らの研究グループは、 国立がん研究センター東病院の中村能章氏、 坂東英明氏、 吉野 孝之氏らの研究グループと共同で、 RAS変異型転移性大腸癌 (mCRC) の1次治療後に変異ステータスが野生型へ変化した (以下、 NeoRAS WT) 患者を対象に、 その割合および変異ステータスの変化に関連する臨床病理学的特徴について、 SCRUM-Japanにおける GOZILA試験で検討した。 その結果、 抗EGFR抗体を含む治療効果が期待できないとされていたNeoRAS WTのmCRCの一部は抗EGFR抗体が有効である可能性が示唆された。 本研究はNat Communにて発表された。
全体分析に加えて症例数は少ないものの、 病勢の安定していた2例の詳細までを提示することで仮説の提唱に説得力を高めています。
RAS遺伝子変異mCRCは、野生型に比べて予後不良である。 そのため治療開始前にRAS検査を行い、 変異ステータスを確認しておくことが推奨されている。
一方、 RAS変異mCRCの変異ステータスは1次治療後に野生型に変化することがある (NeoRAS WT)。 ただし、 その頻度の詳細は明らかにされていない。
また、 RAS変異型mCRCは抗EGFR抗体による治療効果が期待できないとされているが、 NeoRAS WTのmCRCには有効である可能性が示唆されている。 しかし、 該当患者の臨床病理学的特性は不明である。
本研究は、 進行消化器癌を対象に行われた産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクトSCRUM-Japanにおける2つの研究*のctDNA解析結果を用いて、RAS変異型mCRCがNeoRAS WTに変化する頻度、 および変化が起こる患者の臨床病理学的特性を明らかにする目的で実施された。
2018~2022年にGOZILA試験に登録されたmCRCのうち、 RAS変異が確認され、 その後全身療法を受けた患者478例を対象とした。
478例を以下の2群に分け、 それぞれの全体に占める割合を求めた。
A群 : 治療変更時に血漿中にRAS変異が検出されなかった患者 (NeoRAS WT)
B群 : A群の中で、 少なくとも血漿中にRAS以外の体細胞変異が認められた患者
また、 両群におけるRAS変異ステータスの変化に関連する臨床病理学的特性も検討した。
A群、 B群の全体に占める割合はそれぞれ19.0%、 9.8%だった。
NeoRAS WTのmCRCの臨床病理学的特徴を検討した結果、 以下の特性が遺伝子変異ステータスの変化のしやすさと関連していた。
A群 : 肝転移またはリンパ節転移がないと変化しやすい
B群 : 肝転移なし、 また低頻度のRAS変異があると変化しやすい
抗EGFR抗体を含む治療を受けたNeoRAS WT mCRC91例のうち、 6例が抗EGFR抗体を含む治療を受けていた。
うち1例は部分奏効、 2例が6ヵ月以上の病勢安定を示していた。
著者らは 「これまで抗EGFR抗体を含む治療法の効果が期待できないとされていたRAS遺伝子変異型mCRCのうち、 およそ1割は抗EGFR抗体を含む治療の恩恵を受ける可能性があることが明らかにされた」 と報告した*。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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