海外ジャーナルクラブ
2年前
Kunickiらは、 Successful Aging after Elective Surgery研究に登録されている高齢者を対象に、 術後のせん妄と長期的な認知機能低下、 認知症発症との関連性を前向き観察コホート研究で検討。 その結果、 せん妄は、 術後72カ月までの認知機能低下の傾きを40%加速させることと関連していることがわかった。 本研究はJAMA Intern Med誌において発表された。
高齢者における術後せん妄発症と長期的な認知機能低下が直接的な因果なのかどうか……、 大変難しいテーマです。 どちらか、 というよりは両方の要素が混在する、 と考えるのが良いと思いますが、 今後の研究の詳細な研究成果が待たれます。
せん妄は高齢者において最も一般的な術後合併症であり、 長期的な認知機能低下や認知症発症などの不良なアウトカムと関連している。
高齢者 (70歳以上) :560人
主要な待機手術後の偶発的なせん妄の発生
Confusion Assessment Methodを用いて評価されたせん妄
術後せん妄の発症:134人 (24%)
手術後の認知機能の変化は複雑で、 術後せん妄の発症に関連する、 手術時からの急性、 短期、 中期、 長期の変化の違いを示すエビデンスが見出された。
長期的な認知機能の変化は、 練習効果や回復効果を調整した結果、 年間約-1.0GCP単位 (95%CI、 -1.1~-0.9、 1年に約0.10母標準偏差) のペースで発生した。
せん妄が生じた高齢者は、 1年あたり-0.4GCP (95%CI、 -0.1~-0.7) が追加され、 -1.4 GCP (1年に約0.14母標準偏差) で、 有意に速い長期認知機能の低下を示した。
せん妄は、 待機手術後72カ月までの認知機能低下の傾きを40%加速させることと関連している。 これは観察研究であるため、 せん妄がその後の認知機能低下を直接引き起こすのか、 あるいは潜在性脳疾患を持つ患者がせん妄を発症しやすいのか、 確かめることはできない。 せん妄と認知機能低下の因果関係を解明するためには、 今後の研究が必要である。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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