海外ジャーナルクラブ
1ヶ月前
Vaccarellaらは、 欧州26ヵ国における1980年以降の前立腺癌の発生率・死亡率の経時的変化とそれらに対する前立腺癌スクリーニングの影響を検討した。 その結果、 全対象国における変動幅は、 前立腺癌の発症率が最大約20倍であったのに対し、 死亡率は最大でも5倍にとどまっており、 前立腺特異抗原 (PSA) によるスクリーニングが過剰診断につながる可能性があることが示唆された。 本研究はBMJにて発表された。
前立腺癌のstageと治療の詳細が本研究には含まれていないところがlimitationとなります。
前立腺癌は欧州の男性にとって主要な健康問題であるが、 その発症率・死亡率は国や時期により大きなばらつきを示す。
欧州連合 (EU) では新たなスクリーニングプログラムの提案が進められており、 前立腺癌の疫学的評価が必要とされている。
1980~2020年の、 人口100万人未満の国を除く欧州26カ国*の癌登録を基に、 35~84歳の男性の前立腺癌発症データを調査した。
国・地域レベルの罹患率データは国際がん研究機関 (IARC) のグローバル・キャンサー・オブザーバトリー (GCO) の人口ベースの癌登録データ、 死亡率データは世界保険機関 (WHO) のデータより抽出した。
世界標準人口を基準として、 前立腺癌の年間の年齢調整発症率と死亡率を算出した。
前立腺癌の発症率は国ごとに異なり、 2000年代半ばにピークに達し、 10万人中46人 (ウクライナ) ~336人 (フランス) の範囲であった。
発症率はその後に減少し、 発症率が安定した国もあるが、 それでも最新の罹患率は依然として高く、 直近5年間ではいくつかの国々で再び上昇に転じている。
一方、 死亡率は発症率と比較するとはるかに低く、 ほとんどの国々で経時的に低下していた。 全対象国における変動幅*は、 前立腺癌の発症率が最大20倍であったのに対し、 死亡率は最大5倍にとどまった。
また、 発症率は50歳前後から上昇し、 70~80歳を境に降下に転じる逆U字型を描くのに対し、 死亡率は年齢とともに徐々に増加し、 70歳以降に上昇していた。
PSA検査の実施と前立腺癌の発症に関する情報が得られた12ヵ国では、 発症率の変動がPSA検査の実施数の経時的な変動と並行しており、 発症率とPSA検査実施数に相関関係がみられた。
著者らは 「本研究は、 前立腺癌スクリーニングが過剰診断のリスクを含むことを明示しており、 今後のスクリーニングプログラムの設計には過剰診断の最小化が必要であることを強調している。 この知見は、 政策立案における重要な示唆を提供している」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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