【Lancet】妊娠第1期のマラリア、アルテミシニンを用いた治療は安全か
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海外ジャーナルクラブ

2年前

【Lancet】妊娠第1期のマラリア、アルテミシニンを用いた治療は安全か

【Lancet】妊娠第1期のマラリア、アルテミシニンを用いた治療は安全か
Saitoらは、 妊娠第1期のマラリア患者を対象に、 アルテミシニンをキードラッグとする多剤併用療法 (ABT) と非ABT後の妊娠有害事象について、 系統的レビューと個別患者データのメタ解析で検討した。 その結果、 妊娠第1期におけるABTに関連する流産、 死産、 重大な先天性異常のリスクに基づく胚毒性または催奇形性の証拠は見いだせなかった。 本研究は、 Lancet誌において発表された。

📘原著論文

Pregnancy outcomes after first-trimester treatment with artemisinin derivatives versus non-artemisinin antimalarials: a systematic review and individual patient data meta-analysis. Lancet. 2022 Nov 25;S0140-6736(22)01881-5. PMID: 36442488

👨‍⚕️HOKUTO監修医コメント

本研究結果を持って、 「妊娠第一期のマラリアに対して、 アルテミシニンをキードラッグとする多剤併用療法を第一選択」とWHOが推奨する方向のようですね。 大きな方針転換の科学的根拠となる今回のような研究は、 想像を絶する大きな重圧がPI (Principal Investigator) にのしかかります。 日本人の先生ですし、 素晴らしい功績です。

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背景

妊娠第1期のマラリアは、 妊娠有害事象と関連している。 アルテミシニンと抗マラリア薬の多剤併用療法は、 合併症のないマラリア原虫に対する非常に有効な第一選択薬であるが、 妊娠第一期にはアルテミシニンの胚毒性が懸念されるため、 クリンダマイシンとキニンの併用が推奨されている。

研究デザイン

対象

妊娠第1期のマラリア患者を対象に、 アルテミシニンをキードラッグとする治療(ABT) と非ABT後の妊娠有害事象について、 系統的レビューと個別患者データのメタ解析で検討

データソース

MEDLINE、 Embase、 Malaria in Pregnancy Library

主要評価項目

流産、 死産、 重大な先天性異常のいずれかの複合と定義した有害な妊娠転帰。

研究結果

12のコホートを含む7つの研究を同定した。

  • 妊娠:34,178名
  • 妊娠第1期にABTに曝露:737名
  • 妊娠第1期に非ABTに曝露:1,076名

妊娠有害事象の発生

  • ABTに曝露:5.7% (736名中42名)
  • 非ABTに曝露:8.9% (1074名中96名)
aHR:0.71、 95%CI 0.49-1.03

流産 (aHR:0.74、 95%CI 0.47-1.17) 、 死産 (aHR:0.71、 95%CI 0.32-1.57) 、 重大な先天異常 (aHR:0.60、 0.13-2.87) についても同様の結果であった。

妊娠第1期の有害事象のリスク

妊娠第1期の有害事象のリスクは、 キニーネよりもアルテメテル・ルメファントリンのほうが低かった。

  • 経口キニーネ:4.8% (524名中25名)
  • アルテメテル・ルメファントリン:9.2% (915名中84名)
aHR:0.58、 95%CI 0.36-0.92

結果の解釈

妊娠第1期におけるABTに関連する流産、 死産、 または重大な先天性異常のリスクに基づく胚毒性または催奇形性の証拠は見いだせなかった。

アルテメテル・ルメファントリンによる治療はキニーネよりも妊娠有害事象と関連が少なく、 ACTの優れた忍容性と抗マラリア効果が知られていることから、 アルテメテル・ルメファントリンは合併症のないマラリアの妊娠第1期の治療として好ましいと考えられる。

アルテメテル・ルメファントリンが入手できない場合は、 キニーネよりも他のACT (アルテスナート・スルファドキシン・ピリメタミンを除く) が優先されるべきである。

今後も積極的な医薬品安全性監視の継続が必要である。

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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