【印象記】米国胸部学会 (ATS) 2024 -呼吸器内科の最新知見に触れて- (中島啓先生)
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亀田総合病院

8ヶ月前

【印象記】米国胸部学会 (ATS) 2024 -呼吸器内科の最新知見に触れて- (中島啓先生)

【印象記】米国胸部学会 (ATS) 2024 -呼吸器内科の最新知見に触れて- (中島啓先生)
2024年5月17~22日に米国胸部学会 (American Thoracic Society : ATS) 2024 international congress  (ATS 2024) が開催されました。 同学会はあらゆる呼吸器内科学の最新の研究に関して、 世界中の研究者が発表・議論を行う世界最大規模の呼吸器学会です。 そこで、 実際に現地に赴いた亀田総合病院呼吸器内科主任部長の中島啓先生に、 印象記をご寄稿いただきました。

ATS 2024の概要

ATS 2024の開催地は米・サンディエゴのMariott Marquis San Diego Marina (マリオットホテル) と、 その横に存在する大規模なSan Diego Convention Centerでした。

第一人者の講演や最新知見のレビューも

ATS 2024では、 Meet the Expert (その分野の第一人者からの講演)、 Year in Review (その年の最新知見のレビュー)、 シンポジウム、 アブストラクトセッション (参加者が発表するセッション) など、 さまざまなタイプのセッションがあり、 大変勉強になりました。

ちなみに、 会期中に聞き逃したとしても、 多くのセッションはオンデマンドで約1年間聞くことができます。

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会場のSan Diego Convention Center
中島氏提供

亀田総合病院からは計5題を発表

今回、 私自身は、 ATS 2024の会期中に開催された肺炎の国際研究会でも発表があり、 一人で口頭発表2題、 ポスター・ディスカッション1題というチャレンジングな体験となりました¹⁾²⁾。

同僚の若手医師2人 (医師5年目および10年目) も、 それぞれポスター・ディスカッションを1つずつ行い、 当科からは合計5題の発表となりました。

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Thematic Poster Sessionの会場。 巨大なホールに膨大な数のポスターが並ぶ。
中島氏提供

会場の雰囲気

世界の同志と出会える場所

今回、 私が専門とする呼吸器感染症分野において世界中のエキスパートの先生方との素晴らしい出会いがたくさんありました。 何よりも嬉しかったのが、 ATSで出会った、 肺炎領域の米国のトップエキスパートが、 私が最近発表した論文を読んで下さっており、 称賛いただけたことです。

私が感じたのは、 海外のエキスパートは、 常に最新論文をチェックされており、 立場に関係なく、 業績を上げている人たちを評価して、 声をかけて下さることです。 そして、 英語論文を書き続けることの重要性もあらためて感じることができました。 英語論文を書いていれば、 一流の研究者も含め、 世界中の医師に論文を読んでいただき、 学問の発展に貢献できるのです。

他にも私が論文をフォローしていた、 ヨーロッパの肺炎研究グループのエキスパートとも知り合うことができました。 トップジャーナルで名前を見る先生達ばかりであり、 興奮してしまいました。 私の今後の目標は 「毎年自分の新しい論文をもってATSに参加し、 トップエキスパートの先生方と交流すること」 になりました。

アットホームな呼吸器感染症部会の集い

呼吸器感染症部会のAssembly (集会) にも参加しましたが、 とても開かれた雰囲気で、 感染症部会の今後の方向性や取り組みに関する報告、 その年のAwardの受賞者表彰などがありました。 世界中で呼吸器感染症に研究に取り組む医師たちが年に1回集まる同窓会的でアットホームな集いであり、 若手を大切にする雰囲気がありました。

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当科の同僚との記念写真
中島氏提供

英会話力の重要性

グローバルに通用する世界の共通語は英語であり、 ATS 2024においても英語力の重要性をあらためて実感しました。

私の場合は、 関わるプロジェクトや仕事の中で、 海外の医師とやり取りすることが増えてきたため、 1年前から本格的に英会話学習を開始しています。 私は学生時代に半年弱の留学経験はありますが、 基本的には 「純ジャパニーズ」 です。 もっと英語ができれば、 さらに深いやり取りを海外の医師達とできたはずであり、 悔しい思いもあったことから、 英会話学習へのモチベーションがより高まりました。

当科の若手医師2人も、 ポスター・ディスカッションの発表で、 冷や汗をかくような経験をしたため、 英語へのモチベーションが大きく高まったようです。

最後に

ATSは、 世界中の同志と出会える素晴らしい場所であると同時に、 呼吸器内科の広範な分野の最新知見を知ることができる学術集会です。

円安の影響もあり、 渡航費や参加費が高騰してしまい、 現在日本の医師が学会に行きづらい状況はあります。 しかし、 施設によっては参加に関わる費用のサポートを得ることができると思いますし、 日本呼吸器学会も海外学会参加助成制度があり、 発表をする参加者の参加費用の助成をしています。

したがって、 若手医師の先生もぜひ参加頂けると嬉しいです。 日々の臨床や研究への大きなモチベーションにつながることを約束します。


次回の記事では、 ATS 2024で取り上げられた注目演題を中心に報告します。

ATS 2024 : 発表演題

  1. Beta-lactam Plus Macrolides Treatment Vs Beta-lactam Monotherapy in Community Acquired Pneumonia: A Propensity Score Analysis Using a Data From Japanese Multicenter Registry. Am J Respir Crit Care Med 2024;209:A4709
  2. Effectiveness of the 23-valent Pneumococcal Polysaccharide Vaccine Against Community-acquired Pneumonia in Older Individuals After the Introduction of Childhood 13-valent Pneumococcal Conjugate Vaccine: A Multicenter Hospital-based Case-control Study in Japan. Am J Respir Crit Care Med 2024;209:A6825
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亀田総合病院 呼吸器内科の紹介

呼吸器内科 後期研修医・スタッフ募集

一言 : 当科では教育および人材交流のために、 日本全国から後期研修医・スタッフ (呼吸器専門医取得後の医師) を募集しています。 ぜひ一度見学に来て下さい。

連絡先 : 主任部長 中島啓

メール : kei.7.nakashima@gmail.com

中島啓 X/Twitter : https://twitter.com/keinakashima1

亀田総合病院呼吸器内科 Instagram : https://www.instagram.com/kameda.pulmonary.m/

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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