HOKUTO通信
2年前
患者の転院搬送で救急車に同乗した際、 帰りの交通手段に困ったことはありませんか?総務省消防庁は 「全国で統一ルールはなく、 各地の実情にあわせて運用している」 といいますが、 中には 「朝まで待って白衣のまま始発電車に乗って帰った」 というエピソードもあるようで…
話題となったのは、 愛知県江南市の江南厚生病院の20代女性研修医が、救急車に同乗して患者を別の病院に送った帰りに、プライベートな用事のため救急車を 「途中下車」 したケースです。
江南市消防本部などによると、 12月16日午後5時20分ごろ、 江南厚生病院から患者の転院搬送の要請が入ったため、 病院の研修医と患者を救急車に乗せ、同県長久手市の愛知医科大病院に搬送しました。
搬送後、 救急車が搬送元の病院に戻ろうとしたところ、 研修医が 「友達と食事会があるので、 地下鉄東山線沿線の最寄り駅まで送ってほしい」 と救急隊に依頼。 救急車は本来の帰路である高速道路のインターチェンジから数百㍍迂回し、東山線の藤が丘駅で研修医を降ろしました。
転院搬送では、 要請元の医療機関の管理と責任の下で搬送するため、 要請元の医師や看護師が同乗することが多いです。
ただ、 帰りの交通手段の確保については特に統一基準はありません。 一方、 帰りの救急車に医師を同乗させるのは救急隊の業務の範囲外となります。
そのため、 地域の実情に応じて 「病院側が医師にタクシーチケットを配布している地域があるほか、 交通の便が良くない地域では救急車が搬送元の病院や最寄りの公共交通機関まで医師を送っているところもある」 (総務省消防庁) など、 さまざまな運用がなされています。
東京都内の救急医師によると、 「救急車に搬送元の病院まで送ってもらうことはよくある。 その途中に駅があるなら下車してもいいと拡大解釈した可能性もある」 と推測します。「突然駆り出されて、 帰りは自腹を切れと放り出されたこともある。 最寄り駅は許容範囲ではないか」 と一定の理解を示す別の医療関係者もいます。
江南厚生病院は 「女性研修医はあくまで帰還の経路上での降車であり、 私的な救急車利用という認識は持っていなかった」 と説明しています。
研修医は今回、 既に勤務時間外で、 途中下車の目的が 「友達の食事会に参加するため」 でした。 病院の上司は研修医に対し、 「途中で降ろしてもらえるなら、 頼んでみてはどうか」 と話したそうです。
こういった点について医療関係者の中でも 「一般の感覚と照らし合わせると批判は免れない」 「指導医側にも問題がある」 との批判の声もあります。
ちなみに、転院搬送で救急車に医師が同乗した場合、救急搬送診療料として1300点を算定できます。 搬送元の病院に対し1万3000円が入る計算です。
また、 特定の要件を満たした場合、 重症患者で 1800点、 新生児で 1500点、 乳幼児で 700点を加算でき、 30分以上の長距離搬送の場合さらに700点が追加されます。 つまり最大で3万円程度の診療報酬を得ることができます。
同乗後の交通手段の確保について 「公共交通機関の有無など地域差が大きく、 統一ルールを策定するのは今後も難しい」 (総務省消防庁) とのことです。 ただ、 交通費の支給など一定の基準があると、 現場の医師や救急隊が判断しやすくなるのも事実ではないでしょうか。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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