HOKUTO編集部
2日前

国際肺癌学会 (IASLC) の2026年世界肺癌学会 (WCLC 2026) が、 9月12~15日に韓国・ソウルで開催される。 今回は臨床試験の主要結果を扱うPresidential Symposiumが2枠設けられ、 計9演題が採択された。 本稿ではこの枠から8題、 Oral Sessionから2題を選び、 いずれも第Ⅲ相試験である10題を領域別に開幕に先立って予告する。
HER2変異を有する未治療の転移性非扁平上皮NSCLCを対象に、 トラスツズマブ デルクステカン (T-DXd) を化学療法+ペムブロリズマブと比較した第Ⅲ相試験の主要結果である。 国内でT-DXdがHER2陽性NSCLCに承認されているのは2次治療以降であり、 1次治療での位置付けは確立していない。 主要評価項目の達成は企業から公表済みで、 今回が詳細データの初回提示となる。 1次治療でADCを先行させる戦略が成り立つかが焦点となる。
EGFRエクソン20挿入変異を有するNSCLCの1次治療として、 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬zipalertinibと化学療法の併用を検証した第Ⅲ相試験である。 zipalertinibは国内未承認で、 米国では既治療例に対する新薬承認申請が進んでいる。 主要評価項目である無増悪生存期間の達成は2026年8月に公表されており、 今回は中間解析の詳細が示される。 同じ変異を対象とするアミバンタマブ+化学療法との使い分けが論点となる。
EGFRエクソン20挿入変異を有するNSCLCの1次治療で、 アミバンタマブ+化学療法を化学療法単独と比較した第Ⅲ相試験の全生存期間解析である。 本試験は無増悪生存期間を主要評価項目として国内承認の根拠となっており、 全生存期間は今回が正式な報告となる。 同変異に対する1次治療の標準がどこに置かれるかは、 本演題と❷REZILIENT 3を並べて読む必要がある。
PD-L1 TPS 50%以上の転移性NSCLCの1次治療として、 TROP2を標的とする抗体薬物複合体サシツズマブ ゴビテカンとペムブロリズマブの併用を検証した第Ⅲ相試験の主要結果である。 サシツズマブ ゴビテカンは国内では乳癌に承認されており、 肺癌領域では未承認。 高PD-L1発現例で長く標準とされてきた抗PD-1抗体単剤に上乗せする意義があるかが問われる。
EGFR-TKI治療後に進行したEGFR変異陽性NSCLCを対象に、 PD-1とVEGFを同時に標的とする二重特異性抗体ivonescimabと化学療法の併用を検証した第Ⅲ相試験の全生存期間 (OS) 更新解析である。 ivonescimabは国内未承認。 初回解析の結果は公表されているが、 OSの統計学的有意性については追跡期間の延長が必要とされていた。 更新解析で結論が変わるかどうかが問われる。
EGFR変異陽性のStage IB~IIIA完全切除例に対する術後オシメルチニブの第Ⅲ相ADAURA試験について、 8年時点のOSを探索的に解析したランドマーク更新である。 術後オシメルチニブは国内承認済みで実診療に定着しているが、 3年間の投与終了後にどこまで生存曲線が保たれるかは長期データを待つ状況が続いていた。 治癒割合の議論に踏み込めるだけの追跡期間に達したかが焦点となる。
切除可能なStage II~IIIBのNSCLCに対し、 術前術後を通じてアテゾリズマブと化学療法を投与する周術期レジメンを検証した第Ⅲ相試験の最終解析である。 周術期免疫療法は複数の第Ⅲ相試験が出そろい、 アテゾリズマブは国内では術後補助療法として承認されている。 議論の軸は有効性の証明から、 どの症例に術前から免疫療法を入れるかという選択に移りつつある。
再発SCLCを対象に、 B7-H3を標的とする抗体薬物複合体Tam-Peli (YL201) をノギテカンと比較した無作為化非盲検第Ⅲ相試験である。 Tam-Peliは国内未承認。 再発小細胞肺癌の2次治療はノギテカンとアムルビシンが長く用いられ、 近年DLL3標的の二重特異性抗体が加わったが、 標準治療との無作為化比較で優越性を示したADCはない。 B7-H3というクラスの立ち上がりを見る一本となる。
再発SCLCを対象に、 B7-H3標的の抗体薬物複合体risvutatug rezetecanをノギテカンと比較した第Ⅲ相試験の主要結果である。 risvutatug rezetecanは国内未承認。 ❽Tam-Peliと同一の標的・同一の対照薬に対する別試験が同じセッションに並んでおり、 B7-H3標的ADCの有効性と安全性がクラスとして再現されるかを直接比較できる構成になっている。
SCLCにおいて、 脳MRIによるサーベイランスに予防的全脳照射を加えるかどうかを比較した第Ⅲ相試験である。 予防的全脳照射は長く標準的に行われてきたが、 MRIによる早期発見が可能になった環境で上乗せの意義があるかは結論が出ていない。 神経認知機能への影響を含め、 照射を省略できるかどうかが焦点となる。 薬物療法ではなく局所療法の適応を問う演題である。
本稿で扱わなかった演題では、 最終日のOral SessionにPD-1/VEGF二重特異性抗体の演題が複数並ぶ (HARMONi-2、 RC148ほか)。 ドライバー領域ではROS1陽性例のTKI未治療データ (ARROS-1) とALK陽性例の7年長期安全性 (CROWN) が、 小細胞肺癌では既存標準薬の投与間隔最適化 (DeLLphi-309) が示される。 このほかすりガラス成分を含む早期肺癌への縮小手術 (GREAT)、 免疫療法後の局所根治治療の上乗せ (LONESTAR) も予定されている。 HOKUTOでは本稿の10題を含む注目演題について、 学会レポートを順次配信する。
WCLC 2026における注目演題は、 名古屋市立大学病院呼吸器・アレルギー内科教授の赤松弘朗先生にご解説いただく予定です。

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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