HOKUTO編集部
1年前
2023年6月、 欧州血液学会 (EHA 2023) が開催されました。 同学会は、あらゆる血液学の最新の研究に関して、世界中の研究者が発表・議論を行う欧州最大の血液学会です。そこで、実際に現地に赴いた大阪国際がんセンター血液内科副部長の藤重夫先生に、印象記をご寄稿いただきました。
2023年6月8~11日にドイツ・フランクフルトで開催された欧州血液学会総会(EHA 2023)に参加してきました。 コロナ禍の間はvirtualでの参加のみでしたので、 4年ぶりの参加でした。
6月のドイツでしたが大阪とあまり変わらないぐらい暑い感じがありました。 会に参加すると日本人、 中国人、 韓国人を含めてアジア系の参加者が以前よりも少ないのかなという印象を受けました。 日本や中国ではまだ海外に行くのに病院側の規制のハードルがまだあるということもあるかもしれません。 当院でも帰国前にはコロナウイルスのPCR検査を行うことを強制されています。 またわざわざヨーロッパまで来なくてもvirtualで参加できるということもあるかもしれません。 それ以外には旅費・参加費が高いことも影響しているかとは感じました。
少し前よりは改善しているようには思いますが、 私自身の今回の旅費も50万円程はかかっており、 正直ホテルもとても価格に見合った感じはしませんでした。 以前であれば半分近くの費用でも可能だったのではと思いますので、 これは大きな影響ではないかと感じます。
2つほど参加したセッションで興味深かったものを紹介します。
3人のspeakerから話がありましたが、 Dr. Fenna Heyning (Amsterdam, The Netherlands)は、 オランダに拠点を置く「NLC」というThe European Healthtech Venture Builder (医療技術分野に特化したベンチャービルダー) でアカデミアのベンチャー設立等をサポートしている方のようでした。 最近はインフレの影響で金利上昇がありベンチャーの業界も大変そうな話をされていました。
2人目はDr. Mary Ann Anderson (Australia)で経口BCL-2阻害薬ベネトクラクスの開発の話をされました。 ベネトクラクス開発の最初の段階ではPhD studentだったとかで、 やはり基礎研究の段階から臨床導入までに長い時間をかけて開発されてきたのだというのを実感したお話でした
また3番目に登壇したDr. Julio Delgado (Barcelona, Spain)は、 アカデミアで作製するCAR-T細胞療法の話をされました。 スペインではCAR-T細胞が高価すぎるということで、 アカデミアでの作製をサポートすることで対応されているという話を聞いていましたが、 その話が大きくなり、 結局スペインのアカデミアで作製しているCAR-T細胞をEMA承認を得るステップに進んでいるという話でした。 さすがにアカデミアが自分でEMAに申請することはないようで、 その苦労話をされていました。
こちらは詳細は割愛しますが、 症候性の多発性骨髄腫の前段階であるMGUSやくすぶり型骨髄腫(SMM)をスクリーニングで検出していくというのを、 その意義の検討から話があり大変参考になりました。
参考までに米国で行われている研究では、 スクリーニングはAfrican-Americanや家族歴等高リスク例を中心に行っているようです。 また、 症候性になるのをどうして待つ必要があるのかということで、 無症候性の多発性骨髄腫を対象とした試験の結果もいくつか紹介していました。
多発性骨髄腫は新薬の開発で治療成績は大幅に改善しているところではありますが、 その中でも治療を前倒ししていこうという流れを感じました。
今回EHA 2023に参加しましたが、 多くのテーマに関してまとまった情報を得られ大変参考になりました。 Hybridのメリットとして、 聴けなかった分の一部はwebで見直すことは可能なので、 そちらも活用できればと思います。
※欧州血液骨髄移植学会 (EBMT) による同科の紹介動画はこちら。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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