【JCOG1901】消化管原発の進行未治療NETへのエベロリムス+ランレオチドでPFS改善
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HOKUTO編集部

3ヶ月前

【JCOG1901】消化管原発の進行未治療NETへのエベロリムス+ランレオチドでPFS改善

【JCOG1901】消化管原発の進行未治療NETへのエベロリムス+ランレオチドでPFS改善
切除不能進行・再発で予後不良因子を有する非機能性膵・消化管神経内分泌腫瘍 (GEP-NET) におけるエベロリムス+ソマトスタチンアナログ製剤ランレオチド併用療法の有効性と安全性について、 エベロリムス単独を対照に検証した第Ⅲ相無作為化比較試験JCOG1901 (STARTER-NET) の中間解析結果より、 PFSが有意に改善した。 国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科医長の肱岡範氏が発表した。

背景

予後不良症例への治療におけるエビデンスは不足

切除不能で悪性Grade1~2の非機能性GEP-NETに対する標準治療は、 ソマトスタチンアナログ製剤もしくはエベロリムスを代表とする分子標的薬単剤療法である。 しかしKi-67ラベリングインデックス(LI) が5~20%の患者やびまん性肝転移を有する患者など、 予後不良となる集団も存在する。

一方で近年、 エベロリムスにソマトスタチンアナログ製剤を追加することで、 GEP-NETの無増悪生存期間 (PFS) 改善に繋がるという報告が散見されていた。

試験の概要

対象は切除不能進行・再発の非機能性GEP-NET

対象は、 予後不良因子 (Ki-67 LI 5-20%、 またはKi-67 LI<5%かつ肝両葉にびまん性に広がる肝転移) を有するGrade1~2で未治療の切除不能進行・再発非機能性*GEP-NET患者だった。

*ホルモン過剰分泌による症状を有する腫瘍がない状態と定義

2023年11月のデータカットオフ時点で145例が登録され、 以下の2群に1 : 1で無作為に割り付けられた。

  • EVE群 : 72例
エベロリムス10mg/日を連日投与
  • EVE/LAN群 : 73例
エベロリムス10mg/日+ランレオチド120mgを28日毎に投与

主要評価項目はPFS

主要評価項目はPFSだった。 重要な副次的評価項目は全生存期間 (OS)、 奏効率 (ORR)、 病勢コントロール率 (DCR)、 安全性だった。

試験の結果

患者背景は両群で概ね一致

年齢中央値、 性別、 原発腫瘍、 Ki-67 LIなどの患者背景は両群間で概ねバランスが取れていた。

PFS中央値は29.7ヵ月、 HR 0.38で試験は早期中止に

2023年6月をデータカットオフとした中間解析のPFS中央値は、 EVE/LAN群が29.7ヵ月 (95%CI 20.5ヵ月-NE)で、 EVE群の11.5ヵ月 (同 9.0-19.8ヵ月)に比べて有意な改善を示した (HR 0.38 [99.91%CI 0.15-0.96]、 片側p=0.00017)。 この結果を踏まえ、 JCOG 効果・安全評価委員会の推奨により、 試験は早期中止された。

さらに、 2024年11月をデータカットオフとしたPFSアップデート解析でも、 中央値はEVE群の13.6ヵ月 (同 9.1-19.4ヵ月)に対してEVE/LAN群が29.7ヵ月 (95%CI 21.4-38.2ヵ月) と良好な結果を示した (HR 0.44 [95%CI 0.28-0.69]、 片側p=0.00016)。

サブグループ解析も結果良好、 ただしKi-67<5%への効果は低い可能性

またPFSサブグループ解析では、 事前に規定された全てのサブグループにおいて、EVE/LAN群のEVE群に対する優位性が一貫して認められた。

サブグループ別の結果を詳細に見ると、 膵原発例のPFS中央値は、 EVE/LAN群が38.2ヵ月、 EVE群が15.4ヵ月 (HR 0.39 [95%CI 0.22-0.70]、 p=0.0011)であり、 消化管原発例ではそれぞれ23.2ヵ月、 11.1ヵ月 (HR 0.57 [95%CI 0.27-1.17]、 p=0.12)と、 原発部位に関わらずEVE/LAN群で良好な結果を示した。

またKi-67 LI別の評価においては、 Ki-67 LIの値に関わらずEVE/LAN群でPFSが良好だった。 さらに、 Ki-67 LIが5%以上10%未満 (HR 0.51、 p=0.034)、 および10%以上 (HR 0.32、 p=0.0025)と比較し、 5%未満では有効性が低い可能性があることも示唆された (HR 0.61、 p=0.38)。

OSは両群とも未到達、 ORR・DCRは併用群で良好な成績

2024年11月をデータカットオフとした中間解析段階のOS中央値は、 両群とも未到達 (NE) であり、 1年OS率はEVE/LAN群が96.2%、 EVE群が97.0%だった (HR 0.74 [95%CI 0.25-2.24] )。 OSはPFSと同様、 一貫してEVE/LAN群が良好であった。

またORRは、 EVE/LAN群が23.0% (95%CI 14.6-33.3%)、 EVE群が8.3% (同 3.4-16.4%)とEVE/LAN群で有意に高い奏効割合を示した (p=0.011)。

DCRはそれぞれ92.0% (95%CI 84.1-96.7%)、 84.5% (同 75.0-91.5%)とEVE/LAN群で良好な傾向が見られた (p=0.16)。

忍容性は良好

Grade3以上の非血液学的有害事象の発現率は、 EVE/LAN群35.6%、 EVE群14.9%だった。

EVE/LAN群の主な有害事象は、 高血糖であった。 すべての有害事象の忍容性は良好であった。

結論

EVE+LAN併用は標準1次治療として有望

肱岡氏は 「EVE+LAN併用療法はEVE単剤療法と比較し、 有意にPFSを改善し、 安全性プロファイルも管理可能であった。 同レジメンは、 予後不良なGrade1~2の切除不能進行・再発GEP-NET に対する新たな標準1次治療となる可能性がある」 と報告した。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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