HOKUTO編集部
1年前
2023年6月29日〜7月1日に第31回日本乳癌学会学術総会が開催されました。今学術総会では、乳癌領域において日本で初めて行われた外科手技の前向き比較試験JCOG1017の結果や、脳転移を有するHER2陽性転移性乳癌に対するT-DXdの治療効果を検討したROSET-BM試験の結果など、注目度の高い話題が発表されました。HOKUTOにおいて掲載された関連コンテンツをまとめました。
本研究結果から、 T-DXdはBMおよび/またはLMCを有するHER2陽性転移性乳癌患者に対して治療効果を有することが示唆された。 本研究はレトロスペクティブ研究であり、 今後さらなる前向き研究が期待される。
PFS/OS
BMの分類別に見たPFS/OS
PFS中央値:
12カ月時OS率:
野村寛徳氏のコメント
「今回の研究結果から、 T-DXdはHER2陽性の脳転移、 髄膜癌腫症の患者への強力な治療選択薬になることが示された。 また本研究の対象患者においては、 かつて抗HER2抗体トラスツズマブが登場した時のような驚愕すべき治療効果を示す症例がいることが確認されたことも意義ある結果となったと考えている。」
原発巣切除は薬物療法に感受性を持つde novo Ⅳ期乳癌患者においてOSを有意に延長できなかった。 生存期間延長を目的とした原発巣切除はすべてのde novo Ⅳ期乳癌患者には推奨されないが、 転移臓器が限られた患者では治療選択肢になり得る。
枝園忠彦氏のコメント
本試験は乳癌領域において日本で初めて行われた外科手技の前向き比較試験である。今後日本からもこういった価値あるエビデンスが創出できることや、 世界でほぼ同時に同様の臨床的疑問を解決しようとする試験が行われており、 その中で日本の乳癌診療のレベルの高さも示すことができた。引き続きOLIGAMI試験を通して、 信頼性の高いエビデンスを日本から創出していきたい。
JCOG1017試験の結果を受けて、 実臨床においては、 「患者とのShared decision making(SDM)をどう行うか?」という課題がある。 この重要な課題について、 第31回日本乳癌学会のアンコール企画でディスカッサントとして登壇したがん研究会有明病院乳腺センター乳腺外科副部長で、 同学会診療ガイドライン委員会・外科療法小委員会委員長の坂井威彦氏の考察の一部を紹介する。
原発巣切除のメリットがありそうな群とは?
1.局所コントロールが重要な状況にある群
2.転移巣と原発巣の腫瘍不均一性が認められる群
3.全身治療のDe-escalationができる群
坂井氏の考察
Stage Ⅳ乳癌に対しては、 基本的には薬物療法が主体であり、 初期治療が効いたしても、 早期に原発巣切除を検討する必要はない。
薬物療法の効果を見ながら、 かつ原発巣切除によりメリットを得られる症例を見極めたうえで、 手術のタイミングを検討することが肝要となる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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