呼気アセトアルデヒドを測定する医療機器の開発(特集第2回)
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日本食道学会

2ヶ月前

呼気アセトアルデヒドを測定する医療機器の開発(特集第2回)

呼気アセトアルデヒドを測定する医療機器の開発(特集第2回)
本特集では、 第78回日本食道学会で京都大学腫瘍内科学講座教授の武藤学氏に取材した内容を再編し、 3回に分けてお届けします。 アルコールと食道癌リスクに関する医学的最新知見を整理したうえで、 安心して飲酒が楽しめる社会を目指した最新研究についても紹介していきます。第2回となる今回は、 現在開発中である呼気アセトアルデヒド測定器機について、 その背景や進行中である医師主導治験の概要を紹介します。 
*記事内画像は全て京都大学腫瘍内科学講座教授 武藤学氏提供のものです

>> 第1回はこちら

従来の代謝能の判別法と課題

呼気アセトアルデヒドを測定する医療機器の開発(特集第2回)

ALDH2不活性型を判別する現状の方法には大きく、 「アルコールパッチテスト」 「フラッシング質問」 「ALDH2遺伝子検査」 の3つが挙げられる。 しかし既存のアルコールパッチテストやフラッシング質問、 ALDH2遺伝子検査では上表に示すような課題があり、 より安全で簡便な検査方法の開発が望まれていた。

新たな呼気アセトアルデヒド測定器機の開発

A/E比を算出しアルコール代謝能を測定

呼気アセトアルデヒドを測定する医療機器の開発(特集第2回)

そこで、 京都大学腫瘍内科学講座教授の武藤学氏らは、 微量なアセトアルデヒドを直接かつ定量的に測定し、 迅速な結果返却が可能な呼気アセトアルデヒド測定器の開発に着手した。 同測定器では、 半導体ガスセンサーを利用し、 アセトアルデヒド/エタノール比 (A/E比) を計測することで、 アルコールの分解能力を定量的に測ることができるという。

A/E比については、 過去の研究からALDH2が唯一影響を与える因子であることが示されている¹⁾。 そのため、 本器機による測定結果に表示される 「A/E⽐」 が⾼いほど、 アルコール代謝能が低いことが示唆される。 測定結果から示されたアルコール代謝能から、 その人のALDH遺伝子型 (活性型/不活性型) を推定することも可能となる。

パイロット試験の概要

活性型と不活性型に大別されるALDH2遺伝子は、 遺伝子型により不活性型では活性型に比べて同じ量のアルコールを摂取しても高濃度のアセトアルデヒドが検出される一方で、 同じ不活性型でも、 A/E⽐には個人差があることが明らかになっている¹⁾。 すなわち、 ALDH2遺伝子不活性型の中にも発癌リスクが高い人 (A/E比高濃度例) と、 あまり高くない人がいる可能性がある。

医師主導治験の概要

呼気アセトアルデヒドを測定する医療機器の開発(特集第2回)

これを踏まえて、 武藤氏らは、 A/E比と不活性型ALDH2遺伝子の関連性および活性型/不活性型ALDH2遺伝子型の境界値 (カットオフ値) とその範囲を検討することを目的として、 前向き単群非無作為化試験Breath AEROを進行している。

▼方法

呼気アセトアルデヒドを測定する医療機器の開発(特集第2回)

試験開始前に対象者の終末呼気を採取しておき、試験開始後、 0.5%濃度アルコール水を100ml摂取し (摂取終了時刻=ベースライン)、 口腔内を洗うように水40mlを3回に分けて飲む。 アルコール水の摂取から1分 (許容範囲+30秒) 後に2回目の終末呼気採取を行い、 5分 (許容範囲+60秒) 後に3回目の終末呼気採取を行う。

Breath AERO studyの詳細結果は今後発表予定である。 また、 これらの結果を踏まえ、 現在医療機器としてのアセトアルデヒド測定器が開発中である。

では、 誰もが安心して健康的に飲酒を楽しめる社会は実現可能か。 また、 そのような社会を目指すためには何が必要か。 引き続き第3回では、 「アルコールによる健康障害から国⺠を守るプロジェクト」を紹介する。


日本食道学会からのお知らせ

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アルコール飲料と食道癌リスクに関するポスターが完成

アルコールと食道がんに関する啓発活動部会 (部会長 武藤学) は、 アルコール関連食道癌の罹患・死亡を減らすことを目的として啓発活動を行っています。 この度 「アルコール飲料と食道がんリスクに関するポスター」 が完成しました。 是非、 ご活用ください。

>>詳細はこちらから

出典

¹⁾ Clin Transl Gastroenterol. 2017 Jun 8;8(6):e96.

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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