HOKUTO編集部
8日前
Chronic Myeloid Leukemia: A Review
慢性骨髄性白血病 (CML) は、 チロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) 治療により長期生存が現実となった疾患である。 近年は、 深い分子学的寛解 (DMR) を達成した症例において治療中止 (STOP) も選択肢となっており、 初回治療に第2世代TKIを選択する戦略も広がっている。 本稿では、 最新レビューをもとに、 CML治療の基本方針とSTOPに向けた実践ポイントを整理する。
CMLは、 フィラデルフィア染色体 (t[9;22]) によるBCR::ABL1融合遺伝子を有する骨髄増殖性腫瘍であり、 診断時の90%以上が慢性期 (CP) に分類される。 2000年代以降、 TKIの登場によりCML関連死亡率は年間10~20%から1~2%へと劇的に改善し、 一般人口と同等の生存率が実現している。
治療目標は、 従来の 「生存延長」 から 「治療中止可能性」 へとシフトしている。 特に、 BCR::ABL1 IS≦0.01%と定義される、 DMR (深い分子遺伝学的奏効) を2年以上持続した症例では、 TKIを中止しても治療中止後再発は約20%以下に抑えられるという知見が蓄積されつつある。
イマチニブは第1世代TKIとして20年以上の使用実績があり、 安全性に優れ、 コスト面でも利点がある。 初回治療として広く用いられており、 高齢者や併存症のある患者、 深い寛解を急がない症例では現在も有力な選択肢とされる。
一方で、 DMRに到達するまでに時間を要する傾向があり、 STOPを視野に入れる場合には注意が必要である。
ダサチニブ、 ニロチニブ、 ボスチニブは第2世代TKIに分類され、 いずれもイマチニブよりDMRへの到達が早いとされる。 特に若年者やSTOPを目指す症例、 Sokalリスクが高い症例では、 初回から第2世代TKIが選択されやすい。
薬剤ごとに有害事象のプロファイルが異なるため、 選択にあたっては患者背景に応じた使い分けが重要である。
ポナチニブおよびアシミニブは、 第2世代TKIが無効な耐性例や、 BCR::ABL1 T315I変異、 Ph染色体の2重化、 17p欠失、 MECOM遺伝子再配列などの予後不良な遺伝学的異常を有する症例に対して投与が検討される第3世代TKIである。 ポナチニブは、 T315I変異を含む複雑な耐性例に対して有効性が確立されており、 移植前の疾患コントロールにも用いられる。
一方、 アシミニブはABLキナーゼのミリストイルポケットを標的とするSTAMP阻害薬であり、 ATP結合部位阻害型とは異なる新機序を有する。 T315I変異例にも活性を示すほか、 副作用が比較的少なく忍容性にも優れることから、 高齢者や併存症例での使用が期待される。 1次治療における有効性を示したASC4FIRST試験²⁾の追跡期間は短く、 長期的なTFR (治療中止後の寛解維持) への寄与は今後の検証が待たれる。
各TKIの特徴的な有害事象は以下のとおり。
治療効果は、 BCR::ABL1転写産物のISで評価される。 開始後6か月でIS≦10%、 12ヵ月で≦1%を目指すことが推奨されており、 これを達成できない場合はTKIの変更を検討する。
STOPは、 DMRを2年以上維持した場合に検討可能であり、 このような症例では治療中止後のTFR率は40~50%とされる。 さらにDMRを5年以上維持している場合、 TFR率は80%以上に達するという報告もある。
中止後は、 最初の6ヵ月間は2ヵ月ごと、 それ以降は3ヵ月ごとのモニタリングが必要であり、 ISが0.1%を超えた場合はTKI再開を検討する。
同種移植は、 以下のような症例で検討される。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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