医師のためのLIFESTYLE特集
2年前
救急車は緊急を要する傷病者を医療機関に搬送するために各消防署から出動します. 救急車で搬送された人のことを搬送人員といい、 6割を高齢者が占めます. 今回は救急車の出動件数や搬送人員の特徴について、 消防庁のデータをもとに紹介します.
2021年の救急車の搬送件数は619万3,663件で、 前年比26万386件 (4.4%) 増でした. しかし、 新型コロナ流行前の2019年に比べると、 48万6,088件 (6.7%) 減少しています.
搬送人員は2021年に549万1,469人で前年と比較すると19万7,639人 (3.7%) 増加しています. さらに前年の2019年と比べると、 48万6,443人 (8.1%) 減っています.
2021年の救急車による搬送人員の内訳を、 搬送原因の事故種別に分けます. 最も割合が高いのは急病で360万7,099人 (65.7%) . 次に一般負傷が87万7,519人 (16%) 、 交通事故34万534人 (6.2%) と続きます. 全体の構成比で火災は0.1%、 水難や自然災害はさらに低い割合となっています.
同年の搬送人員を傷病程度に分けると、 軽傷 (外来診療) が245万7,607人 (44.8%) 、 中等症 (入院診療) が248万2,813人 (45.2%) 、 重症 (長期入院) が46万4,509人 (8.5%) となります. 死亡は全体の1.5%にあたる8万1,165人でした.
搬送人員の年齢区分は、 高齢者が6割を占めます. 20年前は4割弱でしたが、 搬送人員の増加とともに高齢者の割合も高くなっています.
東京消防庁によると、 管内で起きた高齢者の事故の8割 (その他や不明を除く) が転倒によるものだといいます. 日常の「転ぶ」「落ちる」によって事故が起きやすく、 この2つの事故だけで5年間に30万人以上の高齢者が医療機関に救急搬送されています.
また、 年末年始になると、 東京消防庁は餅で喉を詰まらせないよう注意を呼びかけます. 過去5年間で餅などを喉に詰まらせて救急搬送された人は400人以上いて、 その9割が高齢者といいます.
過去5年間、 医療機関に搬送された高齢者の初診時程度は、 4割以上が中等症以上と診断されています. 高齢者に限った話ではありませんが、 救急搬送されてきた傷病者は緊急性が高いケースを想定しておくべきでしょう.
救急車で医療機関に運ばれてくる傷病者は、 交通事故による外傷や熱湯による火傷など様々なケースが考えられます. とりわけ医療機関の救急科は、 傷病者に対して診療科の隔たりなく、 正確な診断と迅速な処置が求められます.
改正消防法では「傷病者の搬送及び受入れの実施に関する基準」 (実施基準) の策定が都道府県に義務付けられています. 実施基準には傷病者の状況に応じた適切な医療の提供が行われるよう、 救急隊による観察基準や受け入れ医療機関の確保などのルールがあります.
自身が働く医療機関が実施基準でどのように定められているか確認することで、 救急搬送における対応の準備につながるでしょう.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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