HOKUTO編集部
2年前
進行または切除不能な胆道がんの一次治療において、 ゲムシタビン+シスプラチン(GC療法)への抗PD-1抗体ペムブロリズマブ併用効果を検証した第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験KEYNOTE-966の結果から、 主要評価項目の全生存期間(OS)の有意な延長が認められた。
2023年4月14~20日に開催された米国癌研究協会 (AACR 2023) において、 米・University of California San FranciscoのRobin Kate Kelley氏が発表した。 同試験の詳細は、 Lancet (2023年4月16日オンライン版) に同時掲載された。
2021年1月に開催された米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム (ASCO-GI 2021) では、 進行胆道がんの一次治療において、 世界的な標準治療であるGC療法に抗PD-L1抗体であるデュルバルマブの併用効果を検証した第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験TOPAZ-1の結果から、 OSの有意な延長が認められた。 この結果から、 昨年末に本邦でも「治癒切除不能な胆道がん」を適応としてデュルバルマブがGC療法との併用で承認された。
全身療法が未治療で全身状態 (PS) が0/1の切除不能な局所進行/転移性胆道がん患者。 登録された1,069例が1:1でランダムに割り付けられた。
・ ペムブロリズマブ+GC療法併用群
・ GC療法単独群
主要評価項目はOS。
副次評価項目は盲検下独立中央評価 (BICR) による無増悪生存期間 (PFS)、 奏効割合 (ORR)、 奏効期間 (DOR) および安全性。
25.6カ月
両群同様で、 アジア人は46〜47%、 PD-L1 CPS≧1%は両群とも68%だった。
HR 0.83、 95%CI 0.72〜0.95、 P=0.0034
・ ペムブロリズマブ+GC群:12.7カ月
・ GC単独群:10.9カ月
HR 0.86、 95%CI 0.75〜1.00、 P=0.0225
・ ペムブロリズマブ+GC群:6.5カ月
・ GC単独群:5.6カ月
新たなものは認められなかった。 免疫治療関連AEの発現 (全グレード、 グレード3以上)は以下。
・ ペムブロリズマブ+GC群:22%、 7%
・ GC単独群:13%、 4%
転移性または切除不能な胆道がんの一次治療において、 ペムブロリズマブ+GC療法は新たな標準治療となりうる。
AACR2023で発表されたKEYNOTE-966試験では新たな標準治療として抗PD-1抗体であるペムブロリズマブが、 進行胆道がんに加わった。 1,000例規模の大きな試験であり、 全生存期間(OS)のハザード比は0.83であった。 これは、 先に発表されたTOPAZ-1試験のハザード比0.80よりやや劣るが、 難治性の進行胆道がんにおいては、 十分に価値のある結果である。
TOPAZ-1試験では、 GC療法24週後はデュルバルマブとプラセボ群の比較が行われ、 KEYNOTE-966試験では、 GC療法24週後はゲムシタビン単剤投与が行われ、 試験治療群ではゲムシタビン+ペムブロリズマブが投与された。
これは、 世界規模での試験の場合、 GC療法24週後に、 ゲムシタビン単独治療なのか、 経過観察なのか、 さまざまな実臨床での治療が存在していることによる。
試験間の詳細な比較は避けるべきだが、 標準治療群の治療成績を見ると、 標準治療としてゲムシタビン単独療法を24週後に継続すると、 やや良好な成績を示しているように思われる。 KEYNOTE-966試験でのハザード比0.83は、 そのようなゲムシタビン継続群との比較であったことも留意しておく必要がある。
免疫介在性有害事象の発現は、 TOPAZ-1試験では、 全グレードで2.7%と低頻度であったが、 KEYNOTE-966試験では、 22%と報告されている。
一方で、 治療奏効期間中央値は、 TOPAZ-1試験では6.4カ月であったのに対し、 KEYNOTE-966試験では9.7カ月と報告されている。
直接の比較は難しいが、 抗PD-1抗体は効果もあるが毒性も多く出現し、 抗PD-L1抗体では効果はマイルドだが毒性が少ないのかもしれない。
現時点で、 進行胆道がんとしてTOPAZ-1試験に基づくGC+デュルバルマブが薬事承認され、 標準治療として実臨床で用いられている。
ペムブロリズマブが本邦での薬事承認を得るためには、 もう少し時間を要することになる。
今後、 両薬剤が使用可能となった場合に、 どちらの薬剤を使用するのか議論が予想されるが、 現時点のデータからは、 ほぼ同等の治療成績といえる。
その中で、 免疫介在性有害事象や治療奏効期間には若干の違い、 特徴があり、 患者の年齢、 全身状態、 腫瘍量などを考慮して、 使い分けていくことになると予想される。
胆道がんの免疫チェックポイント阻害薬治療においては、 頻回に生じる胆管炎での抗生剤使用、 頻回に投与する制吐目的のステロイドの影響など、 議論すべき課題が多く残っている。 今後、 胆道がん免疫チェックポイント阻害薬治療に、 多くの関連データが登場することを期待したい。
神奈川県立がんセンター
消化器内科 (肝胆膵) 部長
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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