【解説】腎細胞癌に放射線治療の可能性、 第Ⅱ相で局所制御率100%
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HOKUTO編集部

24日前

【解説】腎細胞癌に放射線治療の可能性、 第Ⅱ相で局所制御率100%

【解説】腎細胞癌に放射線治療の可能性、 第Ⅱ相で局所制御率100%
泌尿器科医と腫瘍内科医に、 注目論文を解説いただく連載です。 今回は田代康次郎先生 (厚木市立病院泌尿器科部長) に、 腎細胞癌の放射線治療に関する論文を紹介いただきました。 

今回の注目論文

Stereotactic ablative body radiotherapy for primary kidney cancer (TROG 15.03 FASTRACK II): a non-randomised phase 2 trial

Lancet Oncol. 2024 Mar;25(3):308-316.

概要

背景

体幹部定位放射線治療 (SABR) は、 外科的切除を受けない原発性腎細胞癌患者に対する非侵襲的な根治治療の選択肢として注目されている。

対象・方法

本試験は、 原発性腎細胞癌に対するSABRの有効性を検証することを目的とした、 豪州7施設・オランダ1施設で実施された国際非無作為化第II相試験 (FASTRACK II) である。

生検確認済みの単発病変を有する原発性腎細胞癌患者を対象とし、 腫瘍最大径4cm以下には1回26Gy、 4cm超10cm以下には3回分割42Gyを照射した。

主要評価項目はRECIST v1.1に基づく局所制御 (原発巣の無増悪)、 副次評価項目は腎機能変化、 有害事象とした。

主な結果

対象患者は70例で、 年齢中央値は77歳だった。

局所制御

治療開始から12ヵ月時点での局所制御率は100% (p<0.0001) を達成し、 追跡期間中央値43ヵ月 (IQR 38–60ヵ月) の間、 局所再発は1例も認められなかった。

腎機能変化

ベースライン平均eGFRは61.1mL/min/1.73m²で、 治療開始12ヵ月後に10.8mL/min/1.73m²、 24ヵ月後に14.6mL/min/1.73m²低下し、 以降はプラトーに達した。

有害事象

Grade 3の治療関連有害事象の発現は7例 (10%) に認められた。 Grade 4以上の発現および治療関連死・癌関連死はなかった。

エキスパートの視点

「腎癌には放射線が効かない」 に一石を投じた試験

腎細胞癌は長らく 「放射線抵抗性腫瘍」 と考えられてきた。 実際、 従来の通常分割照射では十分な局所制御効果が得られず、 放射線治療の役割は主として骨転移や脳転移に対する緩和的治療に限定されていた。 そのため限局性腎癌の根治治療は手術が絶対的な標準治療と位置付けられ、 放射線治療が議論の中心となることはほとんどなかった。

しかし本試験は、 その長年の常識に一石を投じる結果となった。 特に注目すべきは極めて高い局所制御率であり、 「腎癌には放射線が効かない」 という従来の認識を見直す契機となる可能性がある。

効果の鍵は 「放射線治療の技術革新」

もっとも、 本試験の結果をもって 「腎癌が放射線感受性腫瘍である」 と解釈するのは適切ではないだろう。 むしろ重要なのは放射線治療技術の進歩である。

従来の放射線治療は1回1.8~2Gy程度の線量を数十回に分けて照射する方法であったが、 SABRでは1回あたり極めて高線量の照射が可能となった。 本試験で用いられた26Gy単回照射や42Gy/3回照射は、 生物学的効果線量 (BED) の観点からみると従来照射とは比較にならない強力な治療である。

高線量照射により腫瘍細胞へのDNA損傷のみならず、 腫瘍血管障害や微小環境の破壊など複数の機序が誘導されることが知られている。 近年、 メラノーマや肉腫など従来放射線抵抗性と考えられていた腫瘍でもSABRの有効性が示されており、 腎癌も同様のカテゴリーとして再評価されつつあると考えられる。

手術困難例の有力な選択肢となる可能性

では、 この結果は明日からの診療を変えるかというと、 現時点で手術をSABRに置き換える段階ではない。 部分切除術は依然として根治性、 病理診断、 長期成績の点で最も確立された治療法であり、 本試験も手術との直接比較試験ではない。 また若年患者や長期予後については今後の検証が必要である。

一方で、 高齢化が進む本邦においては極めて重要な意味をもつ可能性がある。 例えば80歳を超える高齢者、 重度の心肺疾患を有する患者、 抗凝固療法中の患者、 あるいは腎機能低下例では、 手術の利益と侵襲を慎重に天秤にかけなければならない。 このような症例では積極的な経過観察を選択せざるを得ないことも少なくないが、 SABRは新たな局所根治治療として有力な選択肢となり得る。

腎癌治療は個別化治療戦略の時代へ

本研究の重要性は 「切るか切らないか」 という議論から、 「どの局所治療を選択するか」 という時代への変化を示唆した点にある。 今後の腎癌治療は患者背景や併存疾患を踏まえながら、 手術、 アブレーション治療、 SABR、 さらには経過観察を含めた個別化治療戦略を構築する時代になるかもしれない。 本試験はその第一歩として非常に示唆に富む報告である。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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