Baunwallらは, 初回または2回目のClostridioides difficile (C. difficile) 感染症患者を対象に, バンコマイシン投与後の糞便微生物移植 (FMT) の有効性と安全性を検討する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施 (EarlyFMT試験) . その結果, FMTは非常に有効であり, C. difficileから治癒した状態を維持する上で, 標準治療のバンコマイシン単独より優れていることが明らかとなった. 本研究は, Lancet Gastroenterol Hepatol誌において発表された.
📘原著論文
Faecal microbiota transplantation for first or second Clostridioides difficile infection (EarlyFMT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2022 Sep 21;S2468-1253(22)00276-X.PMID: 36152636
👨⚕️HOKUTO監修医コメント
本研究において最近のRCTで使用されているBayesian Adaptive Designが用いられたかどうか不明ですが, 当初予定84症例の半分の42症例で終了しています. RCTも時代と共にどんどん形が変化しており, Bayesian Adaptive Designが主流となりつつあります.
背景
C. difficile感染症は, 抗生物質関連の健康に関わる緊急事態であり, その治療オプションはほとんどない. FMTによる微生物叢の回復は, C. difficile感染が複数回再発した患者に対する有効な治療オプションである.
研究デザイン
- 対象:18歳以上の初回または2回目のC difficile感染症を有する患者.
- 1日に3回以上の水様便 (Bristol便性状スケール 6-7) , C. difficile PCR検査陽性と定義
- 患者は, 125mgのバンコマイシンを1日4回10日間経口投与した後, 1日目および3~7日目に, FMT群またはプラセボ群に1対1で無作為に割り付けられた.
- FMT群:21名
- プラセボ群:21名
- 主要評価項目:治療から8週間後のC difficile関連下痢症 (CDAD) の消失.
研究結果
- 中間解析の結果, プラセボ群はFMT群と比較して有意に低い治癒率が確認されたため (Haybittle-Peto boundary limit p<0-001) , 倫理的理由により試験を中止した.
有効性評価
- 8週時点のCDADの消失
- FMT群:90% (21名中19名, 95%CI 70-99)
- プラセボ群: 21例中7例 (21名中7名, 95%CI 15-57)
- P=0.0003
- 絶対的なリスク低減率は57% (95% CI 33-81) であった.
安全性評価
- 全体として204件の有害事象が発生し, 1件以上の有害事象は, FMT群で21人中20人, プラセボ群では21人全員に報告された.
- 最も多かった有害事象は下痢 (FMT群23例, プラセボ群14例) および腹痛 (糞便微生物移植群14例, プラセボ群11例) であった.
- 試験治療に関連すると考えられる重篤な有害事象は3件発生したが (FMT群:1名, プラセボ群:2名) , 8週間の追跡期間中に死亡や結腸切除は発生しなかった.
結果の解釈
初回または2回目のC. difficile感染症患者において, 初回治療のFMTは非常に有効であり, C. difficileから治癒した状態を維持する上で標準治療のバンコマイシン単独より優れている.