海外ジャーナルクラブ
1年前
Hoiらは、 食道扁平上皮癌の再発と患者生存の予測バイオマーカーとしての血中循環腫瘍DNA (circulating tumor DNA:ctDNA) の臨床的有用性を単施設のコホート研究で検討した。 その結果、 ctDNAに基づく予後モデルが食道扁平上皮癌の予後予測に有用であることが示された。 本研究は、 JAMA Surg誌において発表された。
このような最新のバイオマーカーの有用性の研究は、 すでに実臨床で使用されているSCCやCEAなどとの比較がまず重要になりますが、 多くの研究で最新のバイオマーカーのみが評価されることが多く、 実臨床への展開の意義が不明なことが多いです。
食道癌 (扁平上皮癌/頚部・胸部食道癌-腺癌) のTNM分類(規約版)
食道扁平上皮癌は再発率が高く、 疾患の進行をモニタリングする予後バイオマーカーの需要が高い。
香港のクイーン・メアリー病院で治療を受けた食道扁平上皮癌患者:147例
患者を2年間追跡し、 採取した478件の血漿検体を前向きに解析した。
ctDNAの検出、 無増悪生存 (PFS)、 全生存期間 (OS)
根治療法群74例の内、 59.5%が再発し、 48.6%が死亡した。
OS不良に関連する因子
術後6ヵ月時点のctDNA高濃度 (HR 7.84、 95%CI 1.87-32.97、 p=0.005) とctDNAの変化 (HR 5.71、 95%CI 1.81-17.97、 p=0.003) が独立してOS不良に関連していた。
PFSの悪化と関連する因子
術前化学放射線療法を受けた患者では、 術前補助療法後のctDNAの変化がPFSの悪化と関係していた。
HR 3.16、 95%CI 1.17-8.52、 p=0.02
緩和療法群73例中の内、 97.3%が再発し、 93.2%が死亡した。
PFS、 OSと独立して関連する因子
化学療法前のNFE2L2遺伝子変異がPFS (HR 2.99、 95%CI 1.35-6.61、 p=0.007) およびOS (HR 28.39、 95%CI 7.26-111.03、 p=1.52×10⁻⁶) と独立して関連していた。
OSと独立して関連する因子
化学療法前のctDNAの変化は、 OSと独立して関連していた。
HR 4.46、 95% CI 1.86-10.69、 p=7.97×10⁻⁴
ctDNAに基づく予後モデルは、 食道扁平上皮癌において有用であることが示された。 化学療法前および3サイクル目時点のNFE2L2遺伝子変異やctDNAの変化は緩和療法群の予後因子であり、 治療後および術後6ヵ月後のctDNAの変化は、 根治療法群において再発の高リスク群を規定する可能性がある。 高リスク群においては治療法を適宜切り替えることで患者利益につなげることができると考えられる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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