Paganoらは, 早期パーキンソン病の患者を対象に, 凝集αシヌクレインを標的とするモノクローナル抗体 「プラシネスマブ」 の有効性を検討する第Ⅱ相試験を実施. その結果, プラシネスマブ投与は, プラセボ投与と比較して有意な効果を示さず, インフュージョンリアクションを伴うことが示された. 本研究は, NEJM誌において発表された.
📘原著論文
Pagano G, et al, Trial of Prasinezumab in Early-Stage Parkinson's Disease. N Engl J Med. 2022 Aug 4;387(5):421-432. PMID: 35921451
👨⚕️ HOKUTO監修医コメント
本研究を含めて早期パーキンソン病に対してモノクローナル抗体を使用した2つの臨床研究 (関連記事) が次々にNEJMに発表されて, 両方ともnegative resultでした. もちろんパーキンソン病に対してモノクローナル抗体による治療がこれで終了ではありませんが, 免疫・血液領域に比べて神経領域では効果が乏しい感は否めません. 研究者にとってはとてつもなく高い壁かもしれませんが, 必ず越えられることを信じています.
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早期パーキンソン病患者へのシンパネマブ投与、プラセボと有意差なし
N Engl J Med. 2022 Aug 4;387(5):408-420.
研究背景
凝集αシヌクレインは, パーキンソン病の病態に重要な役割を担っている. 凝集αシヌクレインを標的とするモノクローナル抗体プラシネスマブは, パーキンソン病に対する効果を検討されている.
研究デザイン
- 早期パーキンソン病患者を, 以下の群に1:1:1の割合で無作為に割り付け.
- プラセボ群:105名
- プラシネズマブ1,500mg群(4週間ごとに静脈内投与):105名
- プラシネズマブ4,500mg群(4週間ごとに静脈内投与):106名
- 主要評価項目:MDS-UPDRSのパートI~Ⅲのスコア合計の52週時点までの変化.
- 副次的評価項目:¹²³I-ioflupaneを用いたSPECTで測定した, 臨床的により影響を受ける側の同側半球の被殻におけるドーパミントランスポーターレベル.
研究結果
有効性評価
- ベースラインのMDS-UPDRSスコアの平均値
- プラセボ群:32.0
- プラシネズマブ1,500mg:31.5
- プラシネズマブ4,500mg群:30.8
- ベースラインから52週までの平均変化(±SE)
- プラセボ群:9.4±1.2
- プラシネズマブ1,500mg:7.4±1.2
- プラセボとの差 -2.0, 80%CI -4.2-0.2, P=0.24
- プラシネズマブ4,500mg群:8.8±1.2
- プラセボとの差 -0.6, 80%CI -2.8-1.6, P=0.72
- SPECTによるドーパミントランスポーターのレベルは, 両群の間に実質的な差は認められなかった.
- ほとんどの臨床的副次的評価項目の結果は, 実薬投与群とプラセボ群で同様であった.
安全性評価
- 重篤な有害事象
- プラシネズマブ1,500mg群:6.7%
- プラシネズマブ4,500mg群:7.5%
- インフュージョンリアクション
- プラシネズマブ1,500mg群:19.0%
- プラシネズマブ4,500mg群:34.0%
結論
プラシネスマブ投与は, プラセボと比較して, パーキンソン病の進行に関する全体的な指標や画像指標に有意な効果を示さず, インフュージョンリアクションを伴うことが示された.