肝動注化学療法 (HAIC) またはソラフェニブ治療を受けた進行肝細胞癌患者の転帰を、 レトロスペクティブに検討した試験の結果より、 大血管浸潤 (MVI) を認め、 肝外転移 (EHM) を認めない集団において有望性が示された。
原著論文
▼解析結果
Hepatic Arterial Infusion Chemotherapy versus Sorafenib in Patients with Advanced Hepatocellular Carcinoma. Liver Cancer. 2020 Sep;9(5):583-595. PMID: 33083282
関連レジメン
>>減量・休薬基準や専門医コメントを見る
臨床試験の概要
対象
HAICまたはソラフェニブ治療を受けた20歳以上の進行肝細胞癌患者 (日本の10施設)
方法
1,775例 (HAIC群429例、 ソラフェニブ群1,346例) を肝外転移 (EHM) と大血管浸潤 (MVI) の有無により以下の4群に割り付けた。
- コホート1 MVI+/EHM-:533例
- コホート2 MVI-/EHM-:581例
- コホート3 MVI+/EHM+:215例
- コホート4 MVI-/EHM+:446例
評価項目
主要評価項目
- EHM-の進行HCC患者 (コホート1と2) におけるOS
副次評価項目
- EHM+の進行HCC患者 (コホート3と4) におけるOS
- TTF
- 異なる治療レジメン間でのHAICの治療成績の評価
- HAICとソラフェニブ両方の中止理由
臨床試験の結果
患者背景
- HCCの基礎疾患はC型肝炎ウイルスが最も多く、 次いでB型肝炎ウイルス、アルコール依存症であった。
- 各群のベースラインの特性はバランスがとれていた。
OS中央値
コホート1
(95%CI 9.1-14.3ヵ月)
(95%CI 6.8-12.0ヵ月)
HR 0.667 (95%CI 0.475-0.935)、 p=0.018
コホート2
(95%CI 9.9-16.5ヵ月)
(95%CI 9.7-19.1ヵ月)
HR 1.227 (95%CI 0.699-2.155)、 p=0.475
コホート3
(95%CI 4.7-9.5ヵ月)
(95%CI 3.7-5.8ヵ月)
HR 0.500 (95%CI 0.250-1.000)、 p=0.046
コホート4
(95%CI 1.7-10.9ヵ月)
(95%CI 4.2-11.8ヵ月)
HR 1.125 (95%CI 0.434-2.915)、 p=0.808
レジメンによる比較
多変量解析により、 HAICのレジメン内容はOSに影響を及ぼさないことが確認された。
(95%CI 9.2-12.3ヵ月)
(95%CI 9.0-14.6ヵ月)
(95%CI 6.3-12.1ヵ月)
TTF中央値
コホート1
(95%CI 2.4-3.0ヵ月)
(95%CI 1.8-2.9ヵ月)
HR 0.957 (95%CI 0.772-1.185)、 p=0.683
コホート2
(95%CI 2.2-3.6ヵ月)
(95%CI 3.0-6.8ヵ月)
HR 1.563 (95%CI 1.126-2.165)、 p=0.007
コホート3
(95%CI 1.3-3.2ヵ月)
(95%CI 1.3-3.5ヵ月)
HR 0.820 (95%CI 0.527-1.275)、 p=0.374
コホート4
(95%CI 0.9-2.7ヵ月)
(95%CI 1.1-3.9ヵ月)
HR 1.094 (95%CI 0.566-2.114)、 p=0.789
有害事象 (AE)
- AEにより治療を中止したのは、 HAIC群25.9%、 ソラフェニブ群29.6%であった。
- AEによる治療中止の原因で多かったものは、 HAIC群では肝不全 (4.7%) 、 カテーテル閉塞 (2.3%) 、 腎不全 (2.1%) 、 腹痛 (2.1%) であり、 ソラフェニブ群では肝不全 (5.7%) 、 一般障害 (3.6%) 、 発疹 (2.2%) 、 手足皮膚反応 (2.2%) 、 食欲不振 (2.1%) であった。
著者らの結論
MVI+/EHM-の進行肝細胞癌患者において、 HAICは第一選択となりうる治療法である。