HOKUTO編集部
2年前
〔編集部から〕食道がんは代表的な難治がんの1つとされてきましたが、 近年、 複数の治療を組み合わせた集学的治療の開発が進んでいます。 そこで今回、 消化器内科、 消化器外科、 放射線領域における"Young Opinion Leader"の3氏にご参集いただき、 局所進行食道がんの集学的治療について、 議論してもらいました。 第2回のテーマは、 「切除可能な局所進行食道がん 〜新たな低侵襲食道切除術を展望」です。 ぜひご一読ください。
❶ ロボット支援下食道切除術と縦隔鏡下食道切除術が『食道癌診療ガイドライン 2022年版』に追加されたが,推奨度は弱い。
❷ ロボット支援手術は、 高解像度の3D画像と手ぶれのない安定した手術が可能であり、 今後主流になる可能性がある。
❸ 縦隔鏡下食道切除術は究極の低侵襲であるが、 技術的な難易度が高く、 限定した施設でしか実施されていない。
山本 昨年5年ぶりに改訂された『食道癌診療ガイドライン 2022年版』では、 新たなクリニカルクエスチョン (CQ) として2018年から保険収載となったロボット支援下食道切除術と縦隔鏡下食道切除術が追加されました (胸部食道がんに対して弱く推奨)。 今後の開発について、 展望いただけますでしょうか。
石山 『食道癌診療ガイドライン 2022年版』では新たにロボット支援下食道切除術と縦隔鏡下食道切除術のCQが追加されましたが、 エビデンスはまだ不十分なため、 推奨文はそれぞれ「弱く推奨」と「推奨度を決定できない」とされました。
ロボット支援手術は,高解像度の3D画像と手ぶれのない安定した手術を実践できることが特徴です。 よって、早期癌はもちろんですが、進行した症例についてもロボットの利点を活かした手術が可能となってきます。
一方で、 ロボット支援手術では、 出血などのトラブルが発生した場合は対処が難しい場合もあるので、大血管に浸潤が疑われる癌については慎重な判断が必要です。
今後テクノロジーの進化に伴いロボットの性能は飛躍的に向上すると思います。近い将来、これまで主流だった胸腔鏡手術が衰退し、ロボット全盛の時代が来る可能性はあります。
しかしながら、開胸や開腹手術がなくなることはありません。基本的な手技を疎かにせず、 こうした新しい手術手段に関しても習得していくことが大切だと思います。
山本 縦隔鏡下食道切除術については、 どのような対象に開発が進んでいくのでしょうか。
石山 縦隔鏡下食道切除術は“究極の低侵襲手術”と言えます。胸腔を介さずに、頸部および腹腔内から縦隔にアプローチし、 食道切除と縦隔のリンパ節郭清を行うという非常に魅力的な術式です。
一方で、 縦隔はかなり狭いので、 そこに鉗子を入れて手術操作をするとなると、 テクニカルな部分で非常に難易度も高くなりますし、 血管損傷や臓器損傷などのトラブルが起こった場合には直ちに開胸移行する必要があり、 トラブルシューティングが難しい面があります。
また縦隔鏡下食道切除術は保険適応になっていますが、 現状ではどの施設でも実施できるものではありません。技術的な側面から、実際は限定した施設でしか行われていないというのが現状です。
当院の適応は、 胸腔鏡手術などが適応とならない症例 (かなり肺機能が悪くて開胸操作ができない、 または肺がん手術の既往がありアプローチできないなど) であり、 オプション的にこの術式を使っています。
(第3回「切除可能な局所進行食道がんの集学的治療 オリゴ転移再発へのアプローチ」に続く)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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