HOKUTO編集部
1年前
完全切除術を受けたⅠB~ⅢA期 (日本人患者はⅡ/ⅢA期) のEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん (NSCLC) 患者の術後補助療法において、 第三世代EGFR阻害薬オシメルチニブの有効性および安全性をプラセボを対照として比較検討した第Ⅲ相ランダム化比較試験ADAURAについて、 重要な副次評価項目である全生存期間 (OS) において有意な改善が示された。 米・Yale School of Medicine and Yale Cancer CenterのRoy S. Herbst氏が発表した。 同試験の詳細は、 NEJM (2023年6月4日オンライン版) に同時掲載された。
昨年(2022年)8月、 EGFR遺伝子変異陽性の早期非小細胞肺がん (NSCLC) の術後療法において、 オシメルチニブが適応拡大承認された。 この承認の基となったADAURA試験の主要評価項目である無病生存期間(DFS)については、 同年9月に開催された欧州臨床腫瘍学会 (ESMO 2022) においてDFSの最終解析を含むアップデート解析の結果が報告され、 オシメルチニブの投与によりDFSの大幅な改善が引き続き認められていることが報告されていた(J Thorac Oncol 2023年5月24日オンライン版)。
完全切除されたⅠB、 Ⅱ、 ⅢA期NSCLCで、
-などの適格基準を満たした患者682例。
術後療法として患者を無作為に割り付けた。
患者は病期(ⅠB vs. Ⅱ vs. ⅢA、 ただし日本からの登録はⅡ、 ⅢA期の患者のみ)、 EGFR遺伝子変異の組織型(Ex19del vs. L858R)、 人種 (アジア人 vs. 非アジア人) で層別化した。
両群間で同様。 年齢中央値は62~64歳、 アジア人は64%、 扁平上皮がんは96~97%、 19del/L858Rは55%/45%、 補助化学療法の治療歴ありは60%だった。
データカットオフ日:2023年1月27日
5年OS率
・ オシメルチニブ群:85% (95%CI 79~89%)
・ プラセボ群 :73% (95%CI 66~78%)
HR 0.49 (95%CI 0.33-0.73)、 P=0.0004
Maturity: 21%
・ オシメルチニブ群:15%
・ プラセボ群 :27%
OSの追跡期間中央値
・ オシメルチニブ群:61.7カ月
・ プラセボ群 :60.4カ月
データカットオフ日:2023年1月27日
5年OS率
・ オシメルチニブ群:88% (95%CI 83~91%)
・ プラセボ群 :78% (95%CI 73~82%)
HR 0.49(95%CI 0.34-0.70)、 P<0.0001
Maturity 18%
・ オシメルチニブ群:12%
・ プラセボ群 :24%
OSの追跡期間中央値
・ オシメルチニブ群:61.5カ月
・ プラセボ群 :61.5カ月
サブグループ解析では、 病期別(ⅠB期/Ⅱ期/ⅢA期)、 術後化学療法の有無別に見たグループも含めていずれにおいても、 オシメルチニブ群の良好な結果は一貫して認められた。
完全切除後でⅠB~ⅢA期のEGFR遺伝子変異陽性NSCLCの術後療法において、 オシメルチニブは術後化学療法の施行の有無にかかわらず、 OSの有意な延長を認めた。 ADAURA試験は、 完全切除後のⅠB~ⅢA期EGFR遺伝子変異陽性NSCLCの術後療法において、 DFSおよびOSの有意な改善を認めた初の国際第Ⅲ相試験である。
「分子標的薬では根治しない」「最終的にはプラセボ群が追いつく」などの懸念を覆す結果でした(むしろ経時的にOSの差は開いているくらいです)。
DFSのアップデートがなく、 またプラセボ群で再発後のクロスオーバーが約40%と高くないため、 根治に関する疑問は残ったままですが、 少なくとも延命には間違いなく寄与すると考えてよいと思います。
(例えば日本人データなど) クロスオーバーが高い場合にどのような結果になっているのかは、 今後知りたい点です。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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