聖路加国際病院 救急部
2ヶ月前
日本集中治療医学会と日本救急医学会の合同委員会による「敗血症診療ガイドライン」 が、 2020年から4年ぶりに改訂された。 本改訂では、 敗血症で重要と考えられる9領域 78個の臨床課題に回答している。 全5回に分けてそのポイントを取り上げる新連載の第1回では 「敗血症の診断と感染源コントロール」 について概説する (詳細についてはWeb公開されているガイドライン本文を参照いただきたい)。
引き続き、 2016年に発表された「敗血症および敗血症性ショックの国際コンセンサス定義第3版 (Sepsis-3)」に準拠した定義となっている。
定義同様、 重症度分類も引き続きSepsis-3に準拠している。 Sepsis-3では、 ICUとICU外に分け敗血症診断のプロセスを提案している。 ICUではSOFAスコア、 ICU外ではqSOFAを用いるが、 qSOFAで敗血症が疑われる場合も確定診断はSOFAスコアを使用する。
2つ以上を満たす場合、敗血症を疑う
① 呼吸数 ≧22/分
② 精神状態の変化 (GCS<15)
③ 収縮期血圧 ≦100 mmHg
前版では触れられていなかった、 rapid response system (RRS) の起動指標をスコア化したNEWSが早期発見ツールとして記載されている (英国の国民保険サービスNHSで提唱・利用されている)
🔢NEWS
前版と同様の記載であるが、 臨床現場では十分に実践されておらず、 適切な抗菌薬治療を進めるために必要であることが再度記載された。
敗血症性ショック患者の血液培養陽性率は69%との報告があり、 血液培養だけでは原因微生物の同定に限界がある。 敗血症治療では、 治療に遅延を生じないように注意しつつ、 可能な限り抗菌薬投与前に感染が疑われる部位から検体採取を行うことが重要であると強調された。
各バイオマーカーの診断精度がメタ解析で評価されており、 いずれも単独で診断に繋がる診断精度は示されていない。 あくまでも補助的な指標として参考にする。
敗血症治療において、 適切な感染源のコントロールが原則であり、 初期の蘇生処置後に迅速な感染源への介入を行いことが推奨される。 感染源検索のために、 部位に応じた画像検査(超音波検査、 単純X線検査、 CT検査、 MRI検査など)を選択し、 評価を行う。 血行動態が不安定な患者では、 検査室への移動中の急変にも注意を要する。
特に心エコーに関して、 感染性心内膜炎の診断精度は経胸壁に比べ、 経食道検査が優れており、 画像検査で診断に至らない症例でも臨床的に疑われる場合は、 "経食道エコー"を行うことが推奨されている。
前版では、 腹腔内感染症や壊死性軟部組織感染症など各疾患に対して感染源コントロールのタイミングが記載されていた。 本改訂では外科手術、 膿瘍ドレナージ、 胆道/胆嚢ドレナージ、 カテーテル類の抜去等の感染源コントロールは、 感染源が同定され次第、 速やかに行うことが重要と強調された。
ただし感染性膵壊死に関しては、 早期介入の一般原則は該当せず、 保存的治療で全身状態が保たれていれば、 被包化が起こる時期に内視鏡的もしくは経皮的ドレナージを行うことが推奨されている。
本改訂より新しく言及された項目である。 敗血症は集中治療を専門としない医療者も診療する病態だが、 敗血症患者が重症化した際は、 高度な集中治療が必要となる。
しかし、 日本は欧米と比較し集中治療医も集中治療が可能な病床も少ない。 適切な医療資源・環境が提供されることで敗血症患者の予後が改善されることを目指し、 本CQが取り上げられた。
小児においても、 初期輸液蘇生に不応と判断された時点で気管挿管・人工呼吸管理の開始、 循環作動薬の導入を考慮することがアルゴリズムとして示されており、 「初期輸液蘇生に不応」 の場合に集中治療への移行を判断するのが妥当とされた。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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