【新連載!第一弾】気管支喘息の診断と注意すべき鑑別疾患 (刀祢麻里先生)
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HOKUTO編集部

2年前

【新連載!第一弾】気管支喘息の診断と注意すべき鑑別疾患 (刀祢麻里先生)

【新連載!第一弾】気管支喘息の診断と注意すべき鑑別疾患 (刀祢麻里先生)
日赤医療センター呼吸器内科 出雲雄大先生監修!新連載 「Clinical Notes 気管支喘息」 では10回に分けて、 臨床現場ですぐに使える気管支喘息の疾患情報をお届けします。

重要ポイント!!

  1. 日内変動のある咳嗽など, 気管支喘息に特徴的な症状は問診でチェックする.
  2. 肺がんや結核など他疾患の除外を忘れない.
  3. 気管支拡張薬, 吸入ステロイドによる症状改善が, 気管支喘息診断の手助けとなる.

詳細な問診が診断に迫るポイント

気管支喘息の診断は画像診断や病理診断では確定できないため, まずは症状から 「喘息らしい」 と疑うことが重要である. 喘息の明確な「診断基準」 は設けられていない. 診断の目安としては以下が挙げられている¹⁾²⁾.

気管支喘息の診断の目安

  • 発作性の呼吸器症状
呼吸困難・喘鳴・息苦しさ・咳の反復
  • 可逆性の気流制限
自然にあるいは治療による寛解, 気道可逆性試験陽性
  • 気道過敏性の亢進
気道過敏性試験や病歴上の症状顕在化の誘因の確認
  • 気道炎症の存在
末梢血中の好酸球数の増加や呼気一酸化窒素濃度上昇など
  • アトピー素因
  • 他疾患の除外

実際には, 患者の愁訴としてよくあるのは 「なんとなく息苦しい」 「咳が出てとまらないことがある」「年に何回か同じような症状が出る」である. そこから下記を中心に, 丁寧な問診を行おう.

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気管支喘息らしい患者像

問診の結果, 下記のような患者像が見えてきた場合は喘息の可能性が非常に高い.

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問診以外に追加する検査

問診以外に診断のために追加する検査としては下記が挙げられる¹⁾²⁾³⁾. 

(1) 身体所見

  • 喘息:強制呼気時喘鳴があるか確認する.
  • その他:胸郭変形, 呼吸補助筋の強調, 頸静脈怒張や浮腫, 進行性のるいそう, ばち指などはその他の疾患を示唆する.

(2) 胸部単純写真 (胸部CT)

  • 喘息:ほとんどが正常所見である.
  • その他:心肺疾患の除外を行う

(3) 呼気一酸化窒素 (FeNO) 測定

  • 喘息:気道の好酸球性炎症の指標となる (COVID-19や結核除外後が望ましい). 正常上限値はおおよそ37ppbであるが, 喘息のカットオフ値は22ppbとされている⁴⁾⁵⁾⁶⁾ .

(4) 肺機能検査

  • 喘息:気管支喘息の無症候時は閉塞性障害はなく正常であることが多い. 気道可逆性試験も有用である (ただし肺機能検査はCOVID-19や結核除外後が望ましい).

(5) 血液検査

  • 喘息:IgE好酸数の上昇を確認する.
  • その他:BNPCRPで鑑別疾患を除外する.

(6) 喀痰細胞診

  • 喘息:好酸球≧2~3%好酸球性気道炎症を疑う. 自然痰が出ない場合, 高張食塩水で誘発痰を出す方法もある.

喘息の注意すべき鑑別疾患

このように問診で 「喘息らしさ」 が見えてきた場合, 吸入薬を処方するのが一般的だが, 投薬したままでフォローオフすると重篤な疾患を見落とすことがある. 1~2週間を目安に再診し, 症状改善がない場合, そのほかの鑑別疾患を除外すべきである. 

鑑別疾患除外のポイント

特に高齢患者や先述の 「喘息らしさ」 にかける患者の場合, 肺がんや結核などの重篤な疾患を見逃さないためにも, 初診の時点で積極的に胸部単純写真, もしくはそれに加え胸部CT検査を行うことを推奨する. 現在のコロナ渦においてはPCR検査や抗原検査といったCOVID-19のスクリーニングを行うことも重要である.

日常でよく遭遇する気管支喘息と鑑別を要する疾患を下記に示す. ただし, COPDは合併することがあるため, 注意する.

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気管支拡張薬や吸入ステロイド薬で症状が改善するかを確認しよう

「喘息らしさ」 があり, 他疾患の除外ができれば, 気管支拡張薬や吸入ステロイド(ICS) により症状が改善するかを確認しよう¹⁾. 

実臨床においては, ICSもしくはICS/LABA (吸入ステロイド/長時間作用型気管支拡張薬)と, 発作時の頓用としてSABA (短時間作用型気管支拡張薬) の吸入を開始する. ブデソニド/ホルモテロールを使用したSMART療法の場合, ICS/LABAとしての作用だけでなく, 一剤でSABAの役割も果たすことができるため, 患者のコンプライアンスが良好であることが多い.

効果のある患者の場合, 吸入開始当日より症状の改善が見られることもある. まずは1~2週間後に再診し, 症状の確認を行おう. 症状が改善している場合は喘息と診断し, 治療の継続を行う.

参考文献

  1. Global Strategy for Asthma:Management and Prevention (updated 2021) . 2021
  2. 喘息予防・管理ガイドライン2021作成委員会:喘息予防・管理ガイドライン2021. 協和企画, 東京, 2021
  3. 東田有智ら:Ⅶ 閉塞性疾患と気道系疾患・1 気管支喘息, 呼吸器疾患最新の治療2016-2018. 杉山幸比古ら編. pp265-270. 南江堂, 東京, 2016
  4. 呼気一酸化窒素 (NO) 測定ハンドブック作成委員会, 日本呼吸器学会肺生理専門委員会:呼気一酸化窒素 (NO) 測定ハンドブック. メディカルレビュー社, 東京, 2018
  5. Matsunaga K, et al. Reference ranges for exhaled nitric oxide fraction in healthy Japanese adult population, Allergol Int, 2010,59:363-367. PMID: 20864792
  6. Matsunaga K, et al. Exhaled nitric oxide cutoff values for asthma diagnosis according to rhinitis and smoking status in Japanese subjects, Allergol Int, 2011, 60:331-337. PMID: 21502803
  7. Gloval Intiative for Asthma:Asthma, COPD, and Asthma-COPD Overlap Syndrome (ACOS) . 2021

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【新連載!第一弾】気管支喘息の診断と注意すべき鑑別疾患 (刀祢麻里先生)
最終更新:2022年7月7日
監修:日本赤十字社医療センター呼吸器内科部長 出雲雄大先生

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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