HOKUTO編集部
4ヶ月前

人気連載 「がん遺伝子パネル検査の基礎知識」 の廣島幸彦先生による新連載です。 胆膵がん遺伝子パネル検査の疑問を解決します!

胆膵がんは、 消化器がんの中でも予後不良な腫瘍であり、 根治切除が可能な症例は限られる。 また、 進行・再発症例に対する標準治療を実施しても、 予後改善効果は他のがん種と比較し限定的である。
近年、 次世代シークエンサー (NGS) による網羅的ながん遺伝子パネル検査の臨床導入が進み、 胆膵がんでも個別化治療の可能性が広がりつつあり、 がんゲノム情報に基づいたさらなる治療戦略の開発が期待されている。
胆膵がんは進行が早く治療選択肢が限られることから、 ゲノムプロファイリングを通じた分子標的治療の適応探索が重要である。
膵がんでは、 KRAS、 TP53、 CDKN2A、 SMAD4などの“Big4”と呼ばれる遺伝子変異が高頻度に認められ、 特にKRAS変異は90~95%の症例に存在する¹⁾。
従来、 KRAS変異は 「治療困難な変異」 とされてきたが、 近年はソトラシブなどのKRAS G12C変異に対する阻害薬²⁾やPan KRAS阻害薬³⁾、 KRAS G12D分解薬⁴⁾の開発が進み、 KRAS変異陽性例に対する治療可能性も広がりつつある。
一方、 KRAS野生型症例では、 BRAF V600E変異、 ERBB2 (HER2) 増幅、 NTRK融合などの治療標的となり得る (druggableな) ドライバー変異が検出されやすく、 がん遺伝子パネル検査によるスクリーニングの意義は大きい⁵⁾。
胆道がんは、 解剖学的部位によりゲノムプロファイリングが異なることが報告されている⁶⁻⁸⁾。

中でも肝内胆管がんでは、 FGFR2融合やIDH1/2変異、 BRCA1/2変異、 TMB-highなどのdruggableな変異が豊富に検出される。 特にFGFR2は日本人でも10~20%と高頻度で、 ペミガチニブやフチバチニブ、 タスルグラチニブといったFGFR阻害薬の治療対象となる。
また、 胆嚢がんではERBB2増幅が約15%と比較的高頻度である。 そのため、 トラスツズマブ デルクステカン (T-DXd) などのHER2標的治療の候補となる¹¹⁾。
筆者が所属する神奈川県立がんセンターで検出された、 膵がん・胆道がんにおける主要なdruggable変異について以下に示す。
膵がんのdruggableな遺伝子変異の検出率は9.2%で、 BRCA2が4.2%と最頻であった。
ほかにもKRAS G12C (1.1%)、 BRAF V600E (0.6%)、 ROS1 (0.6%)、 FGFR2 (0.3%) など、 標的治療に直結し得るドライバー遺伝子変異が低頻度ではあるが検出されている。

胆道がんのdruggable変異の検出率は36.6%と高く、 部位別で見ると肝内胆管がんが62%と非常に高値であった。

検出された主なdruggable変異は、 肝内胆管がんではIDH1 (24.1%)、 FGFR2融合 (13.8%)、 BRCA2 (13.8%) であった。 また、 胆嚢がんではERBB2増幅が18.5%の症例で検出されていた。

胆膵がんは依然として予後不良な疾患であるが、 がん遺伝子パネル検査によりdruggable変異を同定することで、 新たな治療選択肢が見出されつつある。
今後は、 得られたゲノム情報を臨床的に活用するため、 さらなる分子メカニズムの解明と創薬開発の進展など、 治療戦略の拡充が期待される。

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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